「女優」という職業の人たちは、なんて孤独で孤高なのだろう。改めてこの密着取材のラスト、樹木希林の後ろ姿を見て思った。
スクリーンで観る飄々としたおばあちゃん、どこか諦観したような抜けた感じ、そういうたぐいのものは、インタビューに答える希林さんからは見られない。遠くない死に向い確実に歩む自分と向き合い、自分と関わる人に対して、最後に自分ができることは何かを真剣に考えあぐねる人がいた。それは密着取材をするディレクターにも向けられた視線でもあった。
ああ、こういうことか。「人のために祈り・・」とは。
半世紀以上女優として、何人もの女や時には人以外のものにも成って生きてくれば、あのようになれるのか・・・。
あんな風にはなれない。あんなに孤高ではいられない。
打ちのめされた。
静謐な中に小さく赤く燃える炎、あるいは線香花火の火の玉のようなものを、痩せた背中の奥に見たような気がした。