今まで何度も映像化された松本清張の「砂の器」が、いかに一級品のミステリー小説であるか、改めて感じさせてくれた見応えのあるドラマだった。
以前、連ドラで中居正広と松雪泰子、刑事を渡辺謙と永井大が演っていた(2004年)のを見た時は、登場人物全てが暗い過去を持ち、救われない気分になった。ミステリーの話は知っているし、特に見るつもりもなかったのだが…。
いやあ、ちょこっと出だしを見ただけなのに、引き込まれる、引き込まれる!
全く期待していなかったのだが、W主演の刑事役の東山紀之、中島健人が予想外に良かったのだ。ヒガシの少年隊時代と原型が同じ頭に白髪が混じったヤサグレた刑事。感情が爆発して泣いたり笑ったりすると堺正章に似てる、どこかマチャアキと顔の系統が繋がる中島健人。中島健人は終盤にいくにつれ瞳の奥に逃れられない宿命を背負った青年の哀しみ、孤独が感じられ、クライマックスでそれを昇華した演奏シーンでの歓喜の表現は、見るものに救いをくれたような気がした。健人、よくやった!(何様?)
暗い暗い土屋太鳳や、弾けていない野村周平。特に野村周平は簡単に目がうるうるしないのがいい。東山紀之もそうだ。だからこそ謎解きの長台詞で、不幸すぎる犯人の生い立ちを語る時、思わず声を震わせたヒガシの演技が光った。
そう、全編にわたりメインの登場人物の渇いた感情が深いところで人肌のような湿り気を欲求しているみたいな、そんな感じ。過剰な人物説明を省いたことで俳優が背負うものが大きくなり力が試された。
そういう意味では、ちょい役みたいに次から次への出てきた大御所の俳優たちがさすがだった。泉ピン子、柄本明、温水洋一、、、。その中で土屋太鳳、野村周平、桜井日奈子の若手の勢いを抑えた演出も功を奏した。
フジテレビ開局60周年特別企画ドラマとあって、不朽の名作「砂の器」と豪華俳優陣の共演、観て良かった。