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はやし蜜豆の犬も歩けば棒に当たる、

好きな俳優の作品を集中して観るのが好き。その記録や映画の感想、日常気になる現象をぼそぼそ綴っていきます。

「blank13」(2018年):斎藤工監督作品。面白い。

家族を不幸のどん底に落としながら、他人には親切だった父親。優しくて気前が良くて、借金取りに追われ続けて、どうにも妻子を守れなくてふらっと出ていった父親。そんな父親に、リリー・フランキーほどハマる人もいない。この人、いつからこんなに引っ張りだこの俳優になったんだっけ?

亭主が出ていく時、(借金取りがいて)危ないから気をつけてと送り出す母親は、彼の優しさを愛していたのかな。恨みごと一つ言わずに、馬車馬のように働き二人の息子を育てながら借金を返す、悲しいくらいに強い強い女を神野三鈴がものすごいリアリティと共にさらっと熱演。神野三鈴、時々ドラマで見かける女優さんだけど名前までは認識していなかった。Wikiで調べてみたら御主人はジャズピアニストの小曽根真だって!!

ボロアパートで2人の息子を育てるためにいくつも仕事をかけもって働く母。朝の新聞配達で交通事故にあっても治療や養生をする余裕もなく、大あざの顔で水商売に出かける母。すごかったなー。

映画の前半は、父親がふらっと出ていった13年後に母子に父親が余命3か月という知らせが届くのまでの間、次男と父親の思い出、そして家族の壮絶な過去の回想。後半は父親の葬儀の場面で、数少ないご焼香をあげにきた輩に、住職が故人の思い出を語ってもらうという提案で知ることになる父親の別の顔。後半はこれはコメディか?と思わせる構成。だって佐藤次郎が思い出を語る最初の口火を切るんだもの!よく神妙な顔で耐えたよ、斎藤工、高橋一生、松岡茉優。

息子たちが知らない父親は、金がなくていいかげんな男だけれども、実は周りに困っている人がいれば手を差し伸べずにはいられない、面倒見の良い人間だった。(家族の面倒は見なかったのに!)

数は少なくても死んだ父親にために心から泣く人間がいる。それは泣き女が雇われた向かいのお寺の盛大な葬儀会場と対比されて面白い。このシーンで一瞬映った金子ノブアキの存在感が絶妙にいい。

兄弟の兄を斎藤工、弟を高橋一生。

ほとんど大きな感情を見せない2人だったけど、一度高橋一生の今まで見たことのない表情があって、それがとてもいい顔だった。

エンディングで流れるハナレグミの「家族の風景」をカバーした笹川美和の声。これでノックアウトされた。だって昔とてもよく聴いた、好きな歌だったから。

「7時には帰っておいでとフライパンマザー」のフライパンマザーになってからもこのフレーズを時々思い出すほどだ。

そう、「どこにでもあるような家族の風景」

この作品の家族のシチュエーションがどこにでもあるわけではないのだろうが、なりふり構わず子供を必死で育て、子供を慈しむ母親。離れた息子が甲子園に出るかもしれないと予選を必ず見ていた父親。息子の作文をずっと持っていた父親。

そう、そういう父母の真実と、憎んでいたはずの父親を結果許すことになるだろう息子たち。それが父親の葬儀の時だったとしても、父親を許せたとしたらその後の彼らの人生は許せずにた時よりも豊かになるはずだ。

どこにでもある(というかあって欲しい)家族の芯の部分。実話に基づいた作品だそうだ。

斎藤工の映画監督としての可能性を感じた。

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