池松壮亮の出演作品を追っていると、どうにもこのブログに感想をかけない作品に出くわすことがある。実際、せっかく観たのにブログに書いていない彼出演の作品がある。本作も、ちょっとそんな感じ。
好きな女性(彼らは姫と呼ぶ)を守るために、彼女が好きな男性になりきり、彼女の部屋の向かいに部屋を借り、彼女を監視し、でも決して出会わず、バレないように彼女を見守り続け、彼女のすべてを受け入れて暮らす男3人。池松壮亮=尾崎豊、満島真之介=ブラッド・ピット、大倉孝二=坂本龍馬。
彼女のすべてを知り、受け入れることで彼女を守る、愛し抜くとしている3人の愛は、やはり歪んでいないか?実際。彼女が不幸に向かって転がって行くのをただ見ているだけだし。
奇妙な女性の愛し方と一緒に提示されるのは、”夢”という言葉。
音楽という夢を追う青年(高杉真宙)のために貢ぐ姫。最初はそんな男でなかったはずなのに、女にキャバクラで稼いだ金を貢がせて平気になる男。姫のささやかな夢は、いいお母さんになること。それだけなのに。
姫役のキム・コッピの横顔が綺麗で悲しい。周りの男達がむちゃくちゃで、現実逃避をするなか、唯一現実を生きている女のリアルを、変わっていく彼女の横顔が語る。
姫の借金取りに存在を見つかったことで、3人の曲がった愛し方、生活は破綻する。最後までその異常な愛のあり方に執着した尾崎豊=池松壮亮の顔のアップからは、姫を思う自分への痛いほどの執着が滲んだ。そうしていなければ自分がなくなるという、追い詰められた動物のようだった。
こんな(私にとっては)ヘンテコな映画なのに、チンピラ役で向井理(=眉毛なし)。ヒモ男の高杉真宙と、結構な俳優陣。二人とも、イケメンどこかにおっぽって、クズ、生ききってます。あ、この作品の男たち、皆クズだわ。悲しいほど。
最後にキム・コッピ、「息もできない」での女優さんだった!うーん、あれ「あゝ、荒野」で、菅田将暉とW主演だったヤン・イクチュンの映画だわ。私の中で観なきゃいけない映画リストに入っているんだけど、恐くてなかなか観られない。こんなところでひょっこり繋がってくる秀作。やはり、観ろと言われてる。