まさに神回。
こんなに悲しくて、悔しくて、切ないシーンをアップテンポの落語「富久」の語りで描くとは!
前回は、小松(仲野大賀)が戦争に駆り出されたくだりて泣けたけど、今回は彼の死。
満州で終戦を迎えかろうじて生き残ったにもかかわらず、道端でソ連兵に射殺されてしまう小松。戦争に行って、一人の敵も殺めることなく(功績をあげることなく)、逃げる過程で命を落とした兵隊(一般人)は、少なからずいたのだと改めて思う。
東京オリンピックを夢見て上京した青年は、遠い満州の地で、志ん生の絶品の「富久」を聞き、駆け出したくなる。駆け出して、駆けて駆けてそのままニッポンに帰りてえ。愛する女房子供に会いてえ。とスッスッハッハッと走っていただけなんだ。でも敗者日本人として撃たれてしまう。この理不尽!
走る小松(大賀)、これまた走っているがごとく息も絶え絶えに語る志ん生(森山未來)が、鬼気迫る!コンチクショウってか!
いやあ、良かった❗テレビとは思えない。
1964年の東京オリンピックが開かれるまでを、それに直接携わる人、選手、国民の目線で変化する時代と共に描く大河ドラマ。ずっとドラマの解説みたいな立場で、ストーリーを語ってきた志ん生一門と、金栗四三側、選手の小松が終戦の満州で交差する。これでこそ大河ドラマ!
終戦直後、現地の人の手のひら返しで破壊された演芸場で、誰が寄席に来るのかと半信半疑で来た志ん生たち。しかし、涙にくれながらも、半ばやけくそで笑いを求めに寄席にきた敗戦国の人々。
あゝ、 エンターテイメント、そしてスポーツもやっぱり捨てたものじゃないぜよ。