追記。大阪の西成らしさならではの演出について。
ビルの屋上で日雇いのおじさんたちの頭をボランティアでカットするシーンが何回か出てくる。西成で美容院を営む父親(吉田鋼太郎)が、亡くなった妻とずっと続けてきたことだ。実は、始めたのは亡くなった母親で、父親は髪を切られる側にいたらしい。妻と出会うことにより、一念発起して二人で美容院をやっていくことにした。
美容院の名前は「アオゾラ」。そしてタイトルの「アオゾラカット」とは、青空の下、屋上でおじさんたちの頭を散髪しながら世間話をする、人と人とのちょっとしたつながりを楽しむ日常の一コマを指しているのではないか。
ラストシーンも、この屋上でのアオゾラカットの様子だった。それまでは自分の技術を信じ、ストイックに髪を切ることだけに集中し、お客さんとの会話をないがしろにしていた息子(林遣都)だったが、すったもんだの挙句、オヤジとともに母親の残した美容院を盛り上げていく決意をしたこの日、青空の下で屈託のない(遣都)笑顔が初めてはじけた。