全編にわたり主人公、永田(山﨑賢人)のモノローグが彼の心情を語り、映画を観ているのに小説を読んでいる気になった。また、シーンが変わる度に画面が真っ黒、演劇で言うところの暗転になり、その回数が多いせいで観ていて長く感じた。
演劇で成功することを夢見てもがく青年と、彼を支えた彼女の数年間にわたる関係性の変化を淡々と描いた本作。ありがちな恋愛物語ではないかと思うのだけれど、永田(山﨑)の独りよがりで、ずるくて卑怯な、夢追い人かつ”ヒモ”ぶりと、沙希(松岡茉優)のどこまでも優しい菩薩の笑顔が、ありがちな二人の関係性をデフォルメする。
「火花」でも感じたことだけれど、又吉の作品で描かれる女性像が、あまりに男から見た理想形のように思えて、なんともモヤモヤする。
こ汚い山崎賢人は「キングダム」でも拝めたけど、本作は舞台が現代の日本だけによりリアル。痩せこけてボサボサ頭なのだけれど、目だけがギラギラ・キラキラしていて、自分の可能性と好きなことを捨てきれない若い男の目に説得力があった。また、松岡茉優もあそこまで普通の女の子を自然体でやれる女優さんも珍しいのではと思うほど、その佇まい、声、笑顔がチャーミングだった。
大きな事件もなく淡々と語られた2人のラブストーリーのラストの展開は印象深い。(「ラ・ラ・ランド」のラストシーンに似ていると感じてしまったけど。)そこで描かれたのは、男は変わらず夢を追い続け、劇場の舞台に立っているが、女は時の変化に順応していくという事実。やっぱり切なく、沙希の涙が観る者の涙を誘う。