カンヌでパルムドール、アカデミー賞でも4部門(作品、監督、脚本、国際長編映画)を受賞と、昨年大いに話題になった本作。オリジナリティに溢れたストーリーとエッジの利いた美しい映像に加え、ハラハラドキドキもあってエンターテイメントとして密度の濃い作品だと思った。そして改めて韓国のエンターテイメントのレベルの高さを見せつけられたような気がした。
両親、兄妹全員が失業中で半地下の家に住む一家。兄は大学受験に4度失敗しているが、それだけ受験しているということはそれだけ勉強しているということで、友人から裕福な家庭の娘の家庭教師を代わりに頼まれる。それをきっかけに、その家庭の弟の美術教師を手先の器用な妹にあてがい、家政婦を追い出して母親に、お抱え運転手を父親に雇替えさせるよう仕向け、家庭教師・使用人として金持ち一家から糧を得ることに成功する半地下に住む4人家族。皆、機知があり、うまくやっていたのだが・・。
金持ち一家が弟の誕生日にキャンプに出かけた夜、その大雨の一夜で物語が大きく展開する。屋敷の元家政婦の秘密が発覚、と同時に彼らのウソも元家政婦にバレ、翌日の晴れた日の弟の誕生日パーティでの阿鼻叫喚。ものすごい勢いでテンポよく展開して息もつけない。ホント!脚本が素晴らしい。
韓国社会の格差を描いているのかとも思ったが、そんな辛気臭いテーマに終わる作品ではないような気がした。
例えば金持ち一家の奥様の、おめでた過ぎる人の良さ(映画では”シンプル”と言っていた)、特別な運転手、特別な家政婦、など”特別”に弱い金持ちの滑稽さ。一方で半地下に住む貧乏人の彼らは、金持ち一家の子どもたちの家庭教師ができるほどの機知と才気を実は持っている。母親だって特別な家政婦として立派に家事をこなせるのだ。しかももともとは何かのスポーツの選手だったらしい。
ソン・ガンホ演じる父親が事業に失敗したことがきっかけで貧乏になったようだが、それが順調にいっていれば、兄も大学に行けたかもしれないし、妹も美大の予備校に行けたのかもしれない。個々人の能力は実はそんなに違わないのかもしれないが、大豪邸に住む一家と半地下に住む一家の境遇はあまりに違っている。
韓国における金持ち一家と貧乏一家のいちいち(志向や感情、そのほか)を丁寧に切り取って、ウィットとエンターテイメントで飾って提示してくれたような作品。母親役のチャン・へジンが「愛の不時着」の主人公の恋敵、ダンの母親役で派手な衣装と厚化粧でちゃらちゃらやっていたのが、本作ではなかなかの鬼嫁ぶりを発揮していて面白かった。(ていうか、上手い!)
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