えええー!介護されていたオヤジ(西田敏行)が亡くなるんじゃなくて、そっちぃ(介護していた長男、寿一=長瀬智也)??
お陰で今最終回のプロローグ、オヤジ(能楽の人間国宝=西田敏行)が脳梗塞の死の縁から甦って、みんなで食卓を囲むシーンの違和感がわかってから、ずーっと涙しながらの視聴となった。
それにしても良くできていた!
新春能楽会の舞が「隅田川」という能楽で、子を亡くした母親が死んだ子どもの幻影を見るというお話。寿一(長瀬智也)が息子の秀生と舞うはずだった。謡で参加しているオヤジは寿一の姿(幻影)と会話しながら、それまで受け入れられなかった息子の死を理解していく。
なんか能楽のストーリーとオヤジと寿一のやり取りがシンクロして、何とも雅で美しい筋書きだった。それを時には風呂のスポンジを持ったランニング姿の長瀬智也がやってるのだよ。そして西田敏行の、親として師としての哀しみと愛おしさの演技が秀逸すぎて、これを書きながらも思い出して涙がでちゃうくらいだ。
長瀬のジメジメしていない演技が本当に良くて、お陰でこちらはしっとりと心置きなく泣けて、そして笑える。長瀬智也、本当に素晴らしい俳優さん。この人本当に引退するのかな。せめてクドカンのやるドラマや映画だけでも出演して欲しい。頼む‼️
人間国宝の父親が率いる能楽の総家を飛び出し、プロレスラーをやっていた長男が、親の介護のために家に戻った1年間。笑ってぶつかって泣いて賑やかな介護をしながら、結果図らずも一家の絆を強めることになった"俺の家の話"。
我が身を振り返りながら可笑しく楽しく見ていたけれど、一つキッチリ心に刺さったのは、人は必ず死ぬということ。突然それを迎える者、成り行きの中でも試行錯誤しながらゆっくり受け入れていく者。様々だと思うけれど、寿一のように自分の周りの人との関係性に、全力で誠実に向き合うことの大切さを改めて感じた。
周囲との人間関係に重きをおかず、あくまで自分の進む道を最後まで極めようとする生き方もあると思う。また一人の人だけとの関係を至上とする人もいると思う。だけど本作の主人公は「ほんと、自分がないのね」と言われるくらい周囲の人への関心や思いやりがあった。
何かを極めようとする程の"業"も"能"ない私は、寿一ほど真っ直ぐにはなれないと思うけど、やっぱり優柔不断に周囲に振り回されながら残りの人生をやり過ごしていくんだろうな。そして割に合わないって思う瞬間もあるのだろうけど「人生なんてそんなものだ」と、ささやかでも幸福な気持ちと共に受け入れられたらいいなと思う。