撮影当時18歳だったと思われる杉咲花が素晴らしい。今でこそ朝ドラ女優だけれど当時はまだ無名に近かったと思う。気が弱くて優しい故に虐められる高校生が、母(宮沢りえ)の後押しをもらい、クラス全員の前で一発逆転の反撃を試みるシーンはいじらしくて泣けた。
以下、ネタバレしますので、ご了承の上お進みください。
宮沢りえ演じる母親は、銭湯を一緒に営んでいた夫(オダギリジョー)に蒸発され、パートをしながら一人娘(杉咲花)を育てている。娘がクラスの数人からいじめのターゲットにされていることを心配しているそんな折、がんに侵され余命が数か月であることを告知される。そこから母、宮沢りえの行動力がすごい。
・蒸発した夫を連れ戻し、銭湯を再開する。(自分亡き後、なんとしても娘を育ててもらわなければならない。)
・そのためには、これまで秘めてきた事実を娘に告げること。
・自分がいなくなった後でも家族と銭湯がうまく回るようにすること。
上記目的のために起こした行動の過程で、雇った探偵父子(父:駿河太郎)、旅の途中で拾ったヒッチハイクの青年(松坂桃李)などとの邂逅が生む良き因果。ラストで、張られた伏線が回収される様が微笑ましくも涙をそそる。
こんなにも、子どものことを考えて考えて、実際に行動に移せるだろうか。
しかも、しかも!ネタバレになるけれど、娘は自分が生んだ子ではないのに・・。
宮沢りえ演じる本作の母親は、タイトル通り「湯を沸かすほど熱い愛」の持ち主で、自分の母性を信じてそれに従い、やや強引とも思えることでも広く深い愛をもってやり遂げた。
終盤、その愛に応えようと母親の入院先の緩和ケア病棟の庭に皆で集まり母親を呼んだ時、宮沢が「はーい」の応えたその声が何とも言えない、弱々しくも愛おし過ぎる声で耳に残る。死期が近いがん患者は大きな声など発することはできない、でも、愛する人たちを見てうれしい、元気に振舞いたい。でも声はでない。でもきっちり彼らに届いたに違いない「はーい」の返事・・・・・。宮沢りえ、素晴らしかったです。本当に。
本作でもオダギリジョーは、お前の優柔不断のせいでこんなヘンテコな家族関係ができてしまっているやないの!と叱責したくなるようなダメ亭主。だけど、風に吹かれる柳のように無抵抗に成り行きのまま生きる様が憎めない。通りすがりで出演したかに見えた松坂桃李の、終盤の物語への参加ぶりもちょっとでき過ぎている感はあるが、熱い母の愛が残した置き土産の一つ、心がちょっぴり温かくなった。
”母の愛は湯を沸かすほど熱い”だけを言いたいわけではない。本作では、自分が生んだ子を自らの弱さや覚悟の無さ、そして都合で捨てた母親も登場した。
母親だから母性があるとはまた違う。
朝食を食べずに行った娘に、せめて牛乳1本でも。
寒そうな恰好をしていれば、羽織るものを。
寒い季節に子どもの裸足の足を見たら心が痛くなる。
自分の子どもでなく他所の子どもでも、そんなふうに心が感じる。母性とは、そういうものなんだろうな、とふと思った。
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