映画は、ストーリーにエモーショナルな山場があって、人の心を揺さぶり、感動や夢、癒しを与えてくれるタイプと、その要素も残しつつ、今までよく知らなかった国や自分が生きてきた中で出会わなかった人々、知らなかった世界etc.に出会わせてくれるタイプがあると思っている。
ドキュメンタリー「北里大学獣医学部 犬部!」を原案にしている本作は、ペットビジネスの陰にある様々な問題、その果ての殺処分の現実に踏み込んでおり、どちらかというと後者に近いタイプだと思った。この作品を観ることによって、ペットショップにいる愛らしい仔犬・仔猫たちが、飼い主と出会えなかった時の行く末を考えることになる・・。もし、その実情を知らない、または考えたことのない犬猫好きの人は、ぜひ本作を観るべきだと思う。
「一匹でも多くの命を救いたい」と孤軍奮闘する主人公、花井颯太(林遣都)の、信念を貫いて行動する様が力強くてカッコいい。犬猫ファーストに直情的に動いているように見えるけれど、実はその周囲の人々に対しても同じように理解と愛情を持って根気強く接していることに後から気づいた。
一方、花井の親友の柴崎(中川大志)は、殺処分をなくしたいという理想を持ち、動物愛護センターに勤務するために獣医師になった。そして自らが犬に手をかけるという十字架を背負いながらも実際に殺処分を減らし、センターの環境を改善していく。思慮深く繊細で、心に傷を負っていく様が痛々しかった。
獣医学生時代の犬部で奮闘する彼らの青春グラフィティと、16年後の彼らの姿、その間命と向き合ったそれぞれのエピソードが行ったり来たりで語られ、犬猫にまつわる彼ら獣医師たちの挑戦の軌跡をたどることができた。
正直クライマックスと呼べるシーンがなくて(敢えていうと多頭飼育で崩壊したペットショップにいた犬たちの譲渡会?)、鑑賞する側の感情の盛り上がりをどこに持っていっていいのかわからないまま映画が終了した、、、。
しかし、冒頭に書いた通り、本作は今まであまり知られていなかった世界を、きっちり提示する、そういうタイプの映画なのだろう。敢えて動物ものにありがちな感動エピソードを入れて涙を誘う作品ではないのだと思う。
それでも犬好きの私は、愛護センターで殺処分を待つ犬たちの(リアルな!)様子が映っただけで心が震えて嗚咽を堪えた。
また、かつて可愛がってくれた女の子が、成長し日々の忙しさに追われ彼を振り返らず玄関を出て行く。その後ろ姿を見つめるワンコの姿を見るだけで涙があふれた。(書きながらシーンが蘇り涙が出てくる・・)
我が愛犬、久喜が亡くなって、もし次に犬か猫を飼う気になったら、絶対保護犬か保護猫だと誓った。
いやしかし、久喜が亡くなったことを受け入れられるかどうか、自信がない。
待て待て、間もなく10歳になる久喜に老いを感じる時はあるが、まだまだ元気ですから。きっとその決断を実行に移すのはずっと先。そう思わないとまた泣けてくる。
思い返すと、いろいろシーンが蘇ってくる「犬部!」
ここ最近、繊細な演技で定評のある林遣都には珍しい、押しの強いアグレッシブな役と、対照的に中川大志の静かで抑えた演技が光った。
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