最終回、何に1番感動したかって、吉沢亮の演技の上手さだ。
老いてもなお国を憂い、己の信念を曲げず、ほとばしる情熱でラジオで訴えた、洪水に見舞われた中国への義援金募集の呼びかけは本当に素晴らしかった。
吉沢亮という俳優を認識したのは、映画「キングダム」を観た時だ。主演は山﨑賢人だったが、王と奴隷の二役をこなした吉沢亮の上手さが際立っていた。(最終的には大沢たかおの王騎将軍が全部持って行ったと思っているのだが)
山崎賢人も相当頑張っていたし、原作漫画を知っている人は、主人公そのまんまだと言っていたことを追記しておく。
吉沢亮については、非の打ちどころのないイケメン、逆にイケメンすぎて私には魅力的に思えなかったのだが、確かにその時、演技上手いなあと思った。だから27歳にして大河ドラマの主役に抜擢された時は驚きはしたが、彼ならいけるのか、とも思った。
予想以上だった。視聴者皆、そう思ったのではないだろうか。
ドラマの感想にもどるが、本作、幕末を描きながらも坂本龍馬や勝海舟が全くでてこない。徳川幕府の視点、市井の人の視点、その後は政府を動かす官僚の視点、そして実業家の視点で、先人たちがどのような思いで近代日本を築いていったかを描いた。
己の信念に基づき何度も失敗しながら、そしてその度に信念を変えながら、理想に向かってがむしゃらに突き進む栄一の姿は、若い吉沢亮ならではの疾走感があり見ていて気持ちが良かった。
明治維新の混乱で命を落とした多くの悲劇についてはさらっとしか触れなかったけれど、初回から最終回手前まで、ずっと主人公の心にいる人物、徳川慶喜がすべての悲劇を全編を通じて背負っていたのではないかと思い当たった。本作では、慶喜の周りにいた優秀な人材が命を落とす場面をきちんと描いている。そして慶喜彼自身、卑怯者とそしられながら何十年も隠遁生活を強いられ、表舞台から姿を消した。明治維新の熱に浮かされた”激動”と対局して”静観”する様の多かった、この慶喜を演った草彅剛が、もう一人の主役だったのではないかとさえ思っている。
彼が画面に登場すると、たちまち話にレイヤーができ、重厚感を感じたからだ。マジで草彅・慶喜も相当良かった。
ラストシーンの、若かりし頃の栄一が疾走する様が「青天を衝け」と言うドラマに込められた一つの思いを表現していたと思った。
一生懸命さと真っ直ぐな様と、信念のある眼差しと。それらを後世に生きる我々がどう受け取るか。
疾走する吉沢亮の笑顔もまた素晴らしかった。
吉沢亮に完敗。