< script data-ad-client="ca-pub-5086079268044038" async src="https://pagead2.googlesyndication.com/pagead/js/adsbygoogle.js">

はやし蜜豆の犬も歩けば棒に当たる、

好きな俳優の作品を集中して観るのが好き。その記録や映画の感想、日常気になる現象をぼそぼそ綴っていきます。

「フェイクスピア」NODA・MAP 第24回公演(2021年):これこそ、生で観なきゃね

(昨年公演された本作をWOWOWで鑑賞しました。以下、ネタバレしています)

 

野田秀樹が言うところの「コトバの一群」が引用された終盤のクライマックスは、圧巻としか言いようがない。
墜落直前の飛行機の搭乗員に扮する、高橋一生、川平慈英、伊原剛志、村岡希美が発する言葉は、ボイスレコーダーに残った最後の数分間の彼らの戦い。緊迫と絶望と最後まであきらめない強い意志が、揺れる機内の混乱を表す群像の動きと共に、観る者に波のように打ちかかり、異様な緊張感と込み上げて来る熱いもので体中がいっぱいになった。

そのシーンもそうだが、動きの演出はさすがだ。開始直後の森の中の木、後から思えば、飛行機が山に墜落の瞬間を表した群舞のような動きも素晴らしい。役者の身体表現を妥協することなく追求した演出に、野田秀樹、健在!を感じた。

と、偉そうに書いているが、私は野田秀樹の舞台をこれまで見たことがあったっけ?
学生演劇をやっていた頃は小劇場ブームで、野田秀樹が主宰する「夢の遊民社」は仲間の一人が憧れていたっけ。私は岡山から大阪に来たばかりで、それまで小劇場の芝居なんて観たこともない。演劇部に入ってから先輩に連れられ、学生演劇や当時はやりのアングラ芝居、小劇場の公演を観た。当時、すでに遊民社のチケットは取りにくかったように思う。でも舞台上で飛んだり跳ねたりする、遊民社の舞台の記憶がある。それとも観たつもりになっていたのだろうか?どこで誰と観たかも皆目忘れている。

あれから何十年も経って、その間の野田秀樹の活躍は言うまでもない。

そして、何に驚いたかというと、野田秀樹本人が役者として登場したこと。まあまあの御年のはずなのに、華奢な体で軽やかに飛んだり跳ねたり!と縦横無尽に好き勝手に、舞台上をたぶん一番イキイキと!駆け回っていた。

 

クライマックスに持っていくまで、”言の葉”を探す男、修行中のイタコ、自殺を考えていた元地下鉄職員、星の王子さま、そしてシェイクスピアを語るフェイクスピアら、それぞれが語るコトバと場面がスピード感と躍動感満載で展開していくのは、観ていて楽しい。

高橋一生を始め、白石佳代子や橋爪功に交じって、前田敦子がイタコ見習い(白石佳代子)の母親!や星の王子さま役の演っていて、やや一本調子なセリフに聞こえたとしても大健闘だった。

白石佳代子と橋爪功は同い年で御年80歳ですと!あの台詞の量、動きは何ということか!橋爪功に至っては、劇中に高橋一生の子供になる時があり、小学生くらいの子どもとしての台詞を、くたびれた老年期に入ろうとする男のいで立ちのままでしゃべり、それがその子どものものとして聞こえてくるから不思議だ。

また、高橋一生は言うまでもないが、上手い。舞台俳優として本当に上手いと思った。
以前「第三舞台」に出演していた高橋一生を一度だけ観たことがあるのだが、その時は筧利夫の面白さに気がいってしまい、一人整った顔の俳優がいたな、と思ったくらいだった。(それでも作品上は主役の次、2番手だったと記憶しているのだが)

 

正直、本作、一度観ただけでは理解するのは難しいと思う。見慣れた人ならそうでもないかもしれないが、私のように野田作品をほぼ初めて観る者にとっては、一つのテーマをいくつもの角度から重厚感たっぷりに描き、しかも展開もスピーディなので頭が追い付かない。

それでも、小劇場に足繫く通っていた頃の学生時代を思い出させてくれ、なんだか懐かしかった。つい、当時観ていた劇団についてググってみたりもした。「第七病棟」「黒テント」「劇団そとば小町」「劇団☆新感線」・・・

余談だけれど、私は就職した後、やっぱり劇団に入って役者をやってみたいと思い、会社員をしながら小さな劇団に入り、旅公演などもこなしていた時期があった。大阪で公演した時の打ち上げで「劇団新感線」は、学生演劇の繋がりで一升瓶を差し入れしていた話などをしていた時、当時の座付き(作家兼演出)が「彼らと君の違いは何だったと思う?」と聞いてきた。「才能があるかないか、かなあ」と言ったら「いや、彼らはそれ(芝居)1本で続けたことだよ」と言われた。

そんなもんかなあ。

今度、NODA・MAPの公演があったら生で観たいと思う。

www.nodamap.com