行ってきました!布施明のライブ。「君は薔薇より美しい」を布施明が生で歌うのを聴きたい!ただ、その1点のために衝動的にオーチャードホールのチケットを購入。(ここに至る経緯は、こちら)
オジさま歌手のお顔を必死で見ることもないかと思ったが、持って行って良かったオペラグラス。(しかも家人が買ったばかりのコンパクト&高性能なもの)シートは2階中ほどの端だった。
御年75歳の布施明。YouTubeで100回くらい見た、聴いた、若かりし頃の彼の美声と声量は期待できまい、それでもその片鱗でいいから、彼の歌声を”生”で聴いておきたい!そう強く思って出掛けたわけだが。
もうね、そんなことを一瞬たりとも考えた自分を恥じます。
1時間40分ほどあったライブ中、ホール中を包み込む大音声を全身に浴びながら「どーなってるんだ!?この人は(この声量は)」と何度も心の中で呟いていた。
間もなくデビュー60周年を迎える大ベテランは、歌の合間にしゃべっているか、移動しているか、どのタイミングかよくわからないけれど、ネクタイや上着を器用に変えていく。コンサート冒頭で、チャップリンみたいな旅芸人のいで立ちで軽快にステップを踏む彼を見て、なんてキュートで洒落ているのだろうと思った。
そしてコンサート中、1度たりとも彼を老人だとは思わなかった。
あの美声は健在、声量も、時々マイクを外して歌いあげるくらい。1人の人間の体からどうやったらあの声が出るのか、感嘆しかなかった。
私は布施明世代ではない。知っている曲と言えば件の「君は薔薇より美しい」「シクラメンのかほり」「マイ・ウェイ」くらいで、そのほかの曲はほとんど知らなかった。「マイ・ウェイ」「シクラメン」はコンサート中盤から終盤に歌われた、「君は薔薇より美しい」が歌われない。長いキャリアの中で彼のヒット曲はこの歌だけではないのだ、今日は聴けないのかな、と半分以上諦めてアンコールの拍手を贈っていた。
そうしたら拍手にのせて、いったん袖に引っ込んだ布施明が軽快なステップと共に再登場し「君は薔薇より美しい」を歌ってくれたのだ。
この時、私は不思議な体験をした。
布施明が全力で表現する「君は薔薇より美しい」を聴きながら、ただただ涙が幾重にも流れ落ちるという現象が起こったのだ。心のどこかが震えるとか、頭の中で何かの情景やシンパシーがあって泣くとかではなく、あの声量と美声で聴く「君は薔薇より美しい」のグルーヴに包まれて、ただただ涙が流れ落ちていた。自分でもその1曲の中でずっと止まらず落ちる涙の量に驚いた。まるで彼の歌がスイッチとなり、バケツの水をバサーッと流したようだった。
どういうこと?とコンサート会場を後にながら考えたけれどわからない。
布施明の歌う「君は薔薇より美しい」に、不思議な力と魅力があったということしか思いつかなかった。
布施明という歌手。神様がこの世界に贈ったギフト=才能。
彼の歌う「君は薔薇より美しい」に出会えさせてくれてありがとうございました。