亡くなった妻の美奈子(尾野真千子)の残した愛車、グレース:ホンダS800のカーナビ履歴に導かれ、主人公の希久夫(滝藤賢一)が旅をするロードムービー。
旅は湘南に住む美奈子の元カレと出会うことから始まり、途中信州で愛車グレースにまつわる珠玉の話を偶然耳にする。滋賀に向かう途中、ヒッチハイクの青年を拾い、その地で生き別れた母親と弟と再会する。そして最後の履歴である四国・松山で、かつてのフィアンセまでたどり着いた。
突然妻を失った喪失感を噛み締めながらも過去の自分と向き合うことで、前を向いて生きていけるよう、妻が愛情深く仕込んだ旅だったわけだが・・。
見終わって最初に思ったことは、美奈子という女性はなんて傲慢な女なのだろう、ということだった。
生き別れた弟と母親との再会までは良かったのだが、美奈子が、元フィアンセ、草織(広末涼子)と希久夫を引き合わせたことが、私にはどうしても納得がいかなかった。
美奈子は自分が希久夫を残して死ぬかもしれない、その時夫を救えるのは草織だけだと信じて草織に会いに行った。尾野真千子と広末涼子、二人の女優が哀しい鬼の形相(!)で言い合う場面はとてもスリリングだっただけれど、私は草織が気の毒に思えて仕方なかった。草織も言ったが、美奈子が死ぬかもしれない病を夫に隠し、自分だけでなんとかしようとしていることも、人の感情を勝手に忖度して自分の愛情を押し付けるさまも、とても身勝手に見えたのだ。
認知症の症状が進んでいる生き別れになった母親の頭の中には、希久夫が小学生の姿のままで生きている。つらい記憶はとっくに封印され、幸せだった時の希久夫が老いた彼女の頭にあるのに、突然大人になった希久夫が目の前に現れ、過去の現実がいきなりフラッシュバックしたのだ。
草織も、後悔を胸に抱えつつも新しい生き方を松山で見つけて平穏にくらしていたのに、突然、自分が裏切った元恋人が現れたのだ。(その前にその恋人の妻が現れた!)
希久夫に関係する人の人生に波風を立てまくったが、それでもその後の彼らの人生を、きっと豊かにするであろう、美奈子の旅。
これを書きながら、私はいつの間にか視聴後に感じた美奈子を非難する思いがなくなっていくことに気がつく。なんて傲慢な女だ、と腹を立てた理由に気づいたから。それは、美奈子の行動力、愛情深さゆえの人との関わり方が、到底自分にはまねできない、ある意味貴い行為であることに無意識に嫉妬したからだ。
最後に、羽田(林遣都)と腹違いの兄(木村祐一)の、再会からキャッチボールのシーンが微笑ましすぎて、今でも思い出してはニヤニヤしてしまう。
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