手塚治虫の漫画「ブラック・ジャック」のことは知っていたが読んだことはなく、派生したアニメやドラマにも無縁だったのだが、今回高橋一生が演じるということで録画していた。
高橋一生のブラック・ジャックは、想像通りクールで熱くてぴったりだったのだが、それと同じくらい、相棒ピノコを演じた永尾柚乃がとても良かった。
見た目は7歳だが中身は18歳。人の心の機微を理解する18歳のしっかり者を、7歳の彼女が不安げなく演じていることに驚いた。
永尾柚乃のことを、おかっぱ頭で昭和の子ども役専門かと思っていたが、本作ではあの風貌に付けまつげに化粧、相反して独特な幼児言葉という不思議さ。舞台は現代なのにレトロな家屋、衣装、画面の色使いといったファンタジックなドラマ世界に、それがマッチしていて、とてもキュートでかわいらしかった!
漫画のお話の中の2つのエピソードを軸に物語は展開したのだが、やはり「獅子面病(架空の病気)」を患った美人妻(松本まりか)と夫(宇野祥平)の話が現代のルッキズムに一石を投じていて心に響いた。
美人の妻の顔が好きで結婚した夫は、どうしても病気で醜く膨れ上がった妻の顔を受け入れられず、治療の方法を求めてブラック・ジャックの所に来る。しかし治療代2億円にしり込みしてさらに別の医者を探そうとするのだが・・・。
これ以上迷惑をかけられない、また、自分の美しい顔を愛しており、自分のすべてを愛しているわけではない夫に絶望して自殺未遂をした妻を目の前にし、獅子面病は治せないが命は助けるか、このまま見殺しにして一生後悔するかとブラック・ジャックに選択を迫られる夫。
私は、この時、この顔のままで生きる妻も自分も不幸だ、と言って夫は妻の死を選択するのかと一瞬思ったのだが。。そこまでドラマはシュールではなかった。夫は自分のすべての臓器を売って2億円払えるようにするから妻を助けて欲しいと頼んだ。
その時の言葉「妻を亡くして一人で地獄を生きるより、醜い顔のままの妻と一緒に地獄を生きる」というのに考えさせられた。
人は、”忘れる”という心が穏やかになるための最終兵器を持っている。
妻があの顔のままで生きるより、望んだとおり”死なせてやった”ほうが妻はつらくないのではないか、そして自分もいつかはその選択を昇華できるのではないか、、という考えだってあるよなあ。以前、スイスで安楽死を選んだ女性のドキュメンタリーを見た時のことを思い出した。末期がんで余命が限られていた彼女は、苦しいだけの数か月の余生より、まだ少し自由がきく今のうちに逝きたいと、夫と娘2人を残して自死を選択したのだが。
序盤で出てきた研修医(井之脇海)の、異国の地で亡くなった友人探しのエピソードも、なかなかスリリングに展開していたのだが、最後に友人役の早乙女太一と顔が入れ替わった味方良介が、研修医の前に現れる。私はすぐに理解できず、あれ?友人って早乙女太一だよなあ・・髪型が違う?と録画を巻き戻して二度見したのだけれど、研修医は、顔が違っていても雰囲気や佇まいで友人であることをすぐ理解していたことが、後から考えれば胸アツだった。
手塚治虫の「ブラック・ジャック」へのオマージュに溢れ、キャスティングも良く見応え十分だった。
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