浅田次郎の最新小説の映像化。(ネタバレがあります)
都会に住む孤独を抱えた大人のための、カード会社の”ふるさとサービス”。1泊50万円で案内された東北の限界集落と思われる村に行くと、自分を昔から知っている村人が出迎え、示された先には自分の帰りを待ちわびている老いた母が全身で喜びを表しながら駆け寄ってくる・・・。
村まるごと”ふるさとテーマパーク”で、村人はキャスト。特に母親を演じるちよ(宮本信子)の演技力は半端ない。その日突然現れた客=子どもを、本当に待っていたかのように歓迎し、我が子のように世話する様はあまりにも自然だ。話を合わす”子ども”も、最初は戸惑い、カード会社のユニークなサービスを検証しながら母と会話をするのだが、いつの間にか、ちよやちよの家、その村の居心地の良さにすっかり魅せられてしまう。
ふるさとサービスを利用するのは、東京の大企業で社長を務める男(中井貴一)、最近認知症の母親を亡くした医師(松嶋菜々子)、そして定年退職した直後に妻から離婚された男(佐々木蔵之介)。それぞれの抱える孤独は少しずつ違っているけれど、ふるさとの母は、本当の母親のように惜しみない愛情をそれぞれに注いてくれる。
”子どもたち”は、1泊50万円のふるさとサービスを定期的に利用したようだ。しかし、それこそ里心もたっぷりついたある日、ちよの訃報を聞くこととなる。
葬儀で顔を合わせた”子どもたち”を、やっぱり村人たちはちよの子どもとして扱う。
そして、同じように子どもとして駆け付けた男(満島真之介)から聞いたちよの過去。
ちよは、本当に子どもを待っていたのだった。
震災で海に消えたまま、姿を見せない漁師になった息子を。
ありそうでないサービス。ファンタジーの要素を出すのに「まんが日本昔話」のような山村の風景をかわいいジオラマで表した演出が凝っていた。また、子どもたちが母と過ごす夜に、母が聞かせてくれる昔話の人形浄瑠璃の表現力が半端なく、語るちよ=宮本信子の凄みのある声にぞわぞわと震えた。
「人の命はくじ引きみたいなもんだ」と、戦争で亡くなった義兄のことを娘(松嶋)に話したこと、海岸沿いを息子(佐々木)に背負われてそっと目を閉じたこと。ちよの過去を知った時、これまでのエピソードがよみがえり、何とも言えない気持ちになった。宮本信子、ドラマの中で母親という役を演じ、その中で浄瑠璃も語り、しかもすべて聞き取りにくく思われるほどの慈愛に満ちた東北弁。凄すぎた。
見終わって、これ、ご存命だったら市原悦子が演じていただろうか、とふと思い「しゃぼん玉」という映画を思い出した。余談ですが、「しゃぼん玉」の感想はこちら。林遣都主演です。
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