原作は「凶悪ーある死刑囚の告発」
刊行されて程なくのタイミングで読んでいた。
ルポルタージュの優れた筆致にぐいぐい引き込まれ、描かれた極悪非道に震撼した。暗い藪に埋めた死体を掘り返す”ユンボ”(ショベルカー)のくだりではそのシーンか目に浮かび、その後ショベルカーを見るとぞわっとするほどのトラウマになった。
映画化を知って、ピエール瀧、リリー・フランキーの配役があまりにもぴったりで、そしてあの所業の恐ろしさを思いだし観たくても観られなかった。
ついに鑑賞したわけだが、内容を知っていたからか、原作を読んだ時の衝撃ほどでなかった。(私にとってはそれほど原作が衝撃的だった)ほぼ、忠実に描かれていたと思うが、余罪を告発した死刑囚、須藤(ピエール瀧)への、記者藤井(山田孝之)の感情を原作より踏み込んで描いていた気がする。罪を告白し懺悔し、人の心を取り戻したかに見えた須藤が、生きて罪を償いたいとしゃあしゃあと法廷で言うと、おまえは生きていてはいけない!と藤井は叫んだ。
やはりピエール瀧の怪演が素晴らしく、後々須藤の心を考察すればするほど、心がザワつく。
思慮浅く、直情的で暴力の衝動を押さえられない未熟な人間でありながら、生への執着から狡猾に立ち回る。単純な人間だと思うが、人間の中にある動物的な欲求を露にしたり、神妙な態度を見せたり。同じ人間として悲しくなるほど、その機微を見せられた。
リリー・フランキーは、もうその姿形で木村という役を体現。不動産ブローカーとして老人をターゲットに悪行三昧。小心者で自らの手を汚さず、豪胆な須藤に殺人や死体処理を依頼していた。知能犯の木村と暴力を振るうことに躊躇ない須藤は、まさに両輪となり、凶悪の数々を実行していったのだ。
死刑囚から雑誌編集部に送られてきた1通の手紙から始まり、真実を暴き、悪行を白日のもとに曝そうと、執念の取材をした藤井を山田孝之が好演。
この時の山田は、顔や体型に鋭利さがまだあり、無精髭で顔の半分が青黒いのに、横顔も美しかった。
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