公開当時、父が観て「良かったよ」と言っていた本作。ストーリーまでざっくり話してくれたので、相当心に響いたのだと思う。
父は母を5年近く一人で介護し、その母が逝く前に、自分も脳出血になり認知機能が低下、今年90歳になる前にグループホームに入所した。先月、今度は脳梗塞を発症して入院中だ。脳出血になった時、父の表情が一気に乏しくなったこともショックだったけれど、さらに今度は、父の余命がより短くなったことを覚悟せざるをえない、終末期の老人の顔だった。それでも、嚥下機能が回復すれば何とかホームに戻れるということで、嚥下リハビリの評判がいいと噂で聞いた病院に転院してリハビリ中。
私たち姉妹としては、これまで一人で頑張ってくれた父に、もう少し安気な余生を送る時間をもってもらいたい。90歳という年齢に、医師たちは、もう十分生きた・・的な終末期のことしか話さなかったのだけれど。(まあ、そういうものだと思う)
今度父に会いに行ったら「山の郵便配達」観たよ、と話したい。(父から聞いてから20年以上経っているけど!)
さて、本作。山岳地帯の村々を2泊3日の旅程で郵便物を背負って配達する郵便配達人の父親。膝を悪くして引退することになり、引き継ぐことになった24歳の一人息子。
そんな辛い仕事をわざわざ引き継がなくても、、と母親は息子を案じて言うが、息子は郵便配達人は公務員で安定しているし出世の道だってあると言ってやる気満々だ。
息子の配達の初日に、同行することになった父。2人と1匹(父の旅の相棒だったシェパートの”次男坊”)の旅が始まる。
まあ、とにかく過酷な道だ。道なき道、冷たい川を渡る時もある。休憩、泊まる場所までの道のりを予定通りこなさなければ危険な目に遭うこともあろう。
不在がちだった父は、息子にとって遠い存在で、息子は父を少し恐れていたが、父と黙々と山を越え、川を渡り、村で彼らを待つ人々と交流していく中、父の郵便配達人としての矜持を知る。そして父が自分や母にどれだけ心を砕いていたかに思い至る。
そして、父もいつの間にか大きくなった息子を目の当たりにして、思わず涙ぐむシーンも。
それぞれのエピソードが美しく、山々も美しく、いちいちしっとり涙ぐんでしまった。
私の父は、どういう思いでこのシーンを観たのだろうか、そう思うとより一層心の琴線が震えた。
息子のラジオからは英語のポップミュージックが流れ、息子がバスを使ってもいいのに、、とごちた。父はバスを待つ時間が無駄だと言うが、時代の流れの中で配達のやり方も変わるかもしれない。
それでも、山に人が住んでいる以上、きっとなくならないこの仕事。
故郷を捨てずにそこに居続ける人々。
どれだけ時代が進もうとも、親子の情愛や人との交流で生まれるシンパシーは普遍的だ。それらが、しっとりと美しい山の風景と共に静かに心に迫ってくる映画だった。
おとん、この映画のことを教えてくれてありがとうね。
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