映画の感想として的を射ていないかもしれないけれど、昔、女は結婚するまでは父親という男に支配され、結婚していからは夫という男に支配されていたことを思い出した。そしてそれは必ずしも過去ではなく、「支配」とまで言えないにしても大なり小なり今も身近な”男”(身勝手な、とつけたくなる)によって生き方を限定されているのではないか。
ラストシーン、やっと死んでくれた夫の葬儀の後、雨の中、喪服姿でフラメンコを盛大に踊る主人公、依子(筒井真理子)の解放感いっぱいの姿にそう思った。
本作は、理不尽な現代社会が抱える問題に翻弄される中年女性を描いた・・とあるけれど、東日本大震災後の放射能、介護、新興宗教、カスタマーハラスメントなどの現代社会の問題は彼女の心の中の凪に波紋を起こす一石に過ぎない。
依子は、夫(光石研)が失踪する前から、自身が置かれた日常の中で生じる心のさざ波を小さな仕返しでやり過ごしていた。しかし、舅の介護を押し付け夫が失踪してからは、舅を施設に預け怪しい宗教に心の平穏を求めた。そんな母親を見て息子(磯村勇斗)は家を出た。
宗教にのめりこむことで心の平穏を保っていた依子の元に、失踪した夫が数年ぶりに帰ってくる。そこから依子の心にはいくつもの石が投げつけられ、波紋はいくつも幾重にも広がっていく。
夫に仕返しをすべし、とたきつける仕事仲間の木野花との会話がいい。
また、新興宗教のお仲間で登場する、江口のり子、平岩紙の、いっちゃった目つきと表情が秀逸で、可笑しくて仕方なかった。
依子が小さな復習ややり返しで溜飲を下げる度に、チャッチャチャチャ、みたいな手拍子が効果音で入り、やった!とこちらも小さく頷いてみていたのだが、それはすべてラストのフラメンコのシーンにつながるものだった。
家をきれいにし、食事を準備し、毎日洗濯をしてたたみ・・家族が心地よく過ごせるように気を配っているのに、夫や子供は全く気が付いていないそぶり。
主婦の無償の労働に感謝の一言もないと、ほとほと女であることを恨みたくなる。それでも家族を簡単にはやめられない。依子は夫が死ぬまで夫の身勝手になんだかんだと付き合ったし、息子は思い通りの人生を歩んでくれなくても、遠くで幸せに暮らしてくれたらいいと思っているはず。
筒井真理子のあのオニの形相は、妻であり母であり嫁を経験した人なら、いくつかは共感できると思う。私は自分の母親の分まで大いに共感した。
筒井真理子ための筒井真理子の映画。圧巻の演技だった。
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