池袋で高齢男性がブレーキとアクセルを踏み間違え暴走し、母子を含む死傷者が出た事件が本作の着想のベースにあるのだろうか。
主人公の良子(尾野真千子)の夫、陽一(オダギリジョー)が自転車で通行中、元官僚の老人が運転する車に跳ねられ亡くなる。老人は認知症でブレーキとアクセルを踏み間違えたのだ。多額の補償金の提示はあったが謝罪がないことに納得できず、良子は補償金を受け取らなかった。
それから7年。
コロナ禍の中、生業にしていた喫茶店はつぶれ、スーパーの生花売り場と風俗のアルバイトで一人息子を育てる良子。彼女の生活に必要な金額がことあるごとにスクリーン隅に提示されるのだが、苦しい家計の中、亡くなった夫の父親の施設費用から、夫の愛人の子への養育費の支払いまで背負い毎月赤字の生活。なのに良子は恨み言も言わず「まあ、頑張りましょう」を口癖に日々懸命に生きている。
それなのに、良子親子には理不尽な災難ばかりが降りかかる。
息子(和田庵)は、母親が風俗で働いていることでいじめにあうし、良子はスーパーのパートを理不尽な理由で解雇される。
息子のモノローグが時々入るが、ちょっと変わって理解しがたいところのあるかーちゃん(良子)に、なぜ怒らないのか?と聞いても良子は「まあ、頑張りましょう」ではぐらかす。
見ているこちらとしては、いつかマジメで優しい息子の方が、怒りを爆発させてとんでもないことをしでかすのではないかとハラハラしたのだけれど、そうではなく爆発したのはかーちゃんの方だった・・・。
救いは、息子が優秀で塾へ行っているわけでもないのにトップクラスの成績であること。そして彼が、”正しく臆病”だったこと。
そしてもう一つ。良子が実はダメダメ夫だったと思われる陽一のことを理解し、深く深く愛していること。
登場する男性キャラのほとんどがクズ。良子は男なんてだいたいそんなもの、と割り切っているがその達観もすごい。
冒頭の交通事故のシーンのほか、写真が映される以外登場しないオダギリジョー。そのダメ夫ぶりがちょいちょい台詞で語られ、その情報以上にダメ男を確信させるオダギリジョーの存在自体の説得力に関心した。(褒めているのかディスっているのか)
最後に、尾野真千子の懇親の演技が素晴らしかったのは言うまでもないが、良子の風俗店の同僚、ケイを演じた片山友希がとても良かった。
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