”不屈の精神”とは、こういうことなのだろうと思った。
決して諦めず最後まで病気(がん)と闘った平尾誠二を、本木雅弘が静かで包容力のあるたたずまいで演じきった。
鼻の上に少ししわを寄せたチャーミングな笑い方。がんが進行して弱っていくにつれ出しにくくなった声。本当に平尾誠二がそうだったか知らないけれど、本木雅弘が演じる平尾誠二を見てしみじみと、モッくんすごく良いなあと思った。
癌と診断された時にはすでに手遅れで、2,3か月もてばいいと宣告された平尾誠二(本木雅弘)。雑誌の対談をきっかけに友人となった山中伸弥(滝藤賢一)が、平尾のがんを治療するため二人三脚で闘い抜いた1年を描いた本作は、平尾誠二というラガーマンのピッチ以外の姿を残してくれた、貴重なものとなった。
登場人物たちの台詞は決して多くなく、過度な演出もない。病気の進行とそれに対峙した平尾本人や平尾の妻(石田ひかり)、家族、山中や山中の妻(吉瀬美智子)、医師たちの奮闘を淡々と描いた。
平尾は積極的に新しい治療法にも取り組み、弱っていく自分を一番わかっていたはずだけれど、自分のやるべきこと、すなわちチームの試合を見ること、できるアドバイスを彼らにすること、そして病気との闘いを諦めないこと、それらを最後まで全うした。
周りが意気消沈しているのに、本人が一番明るく前向きだった。
その高い精神性は驚くばかりだし、その強さ、大きさに尊敬の念を抱かない人はいないだろう。
ドラマを見た後、平尾誠二が心から愛したラグビーというスポーツについて、2019年の日本大会をきっかけに関心を持つようになっていた私は、さらにいいなあと思うようになっていた。
今年のワールドカップで試合を見ていた時、ラグビーってなんて美しいんだと感じたことがあった。肉弾戦からボールが抜け出て、パス回しに移る過程で、後方斜めに布陣する選手の作るラインが緑の芝生に映え、とても美しいと思ったのだ。
力の衝突から軽やかなパス、そして抜けてボールを抱えて疾走。また阻まれ、再び力の激突。ルールもおぼつかないの私だが(右下に展開ごとにルールを説明してくれて助かる)、ゲームにはリズムがあり、道具なしで人のパワーだけでぶつかり合う様や、疾走感、見ていて本当に力が入るし楽しい。
本作の中で、山中の台詞にあった
「ラグビーは少年をいち早く大人にし、大人にいつまでも少年の心を抱かせる」
元フランス代表ジャン・ピエール・リーブの名言が腑に落ちた。(よく知らなかった時は荒くれ男の肉弾戦だと思っていた私だが!)
ラグビーが育てた男、平尾誠二、ラグビーがきっかけで友情を築いた研究者とラガーマン。二人の志の高さに感動し、志半ばで旅立った平尾に思いを馳せ、やっぱり涙が止まらなかった。
ユーミンの「ノーサイド」が今も頭を回っている。
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