長く生きることも悪くない。人生の最後の最期、とても素敵な時間が待っているかもしれない。
人生100歳時代と言われても、年金だけでは暮らせないし、物価はどんどん上がるし、大病を患わなくても長く生きることはリスクだと考える人もいる。
しかし本作を観れば、どんな人生でも長く生きてきたこと、それ自体が尊敬に値するような気持ちになる。
原作のフランス版では92歳のマドレーヌ(リーヌ・ルノー)、リメイクの日本版では85歳のすみれ(倍賞千恵子)。お金持ちそうな身なりの老婦人を乗せた、金欠で余裕のないタクシー運転手、シャルル(ダニー・ブーン)、宇佐美浩二(木村拓哉)。
老婦人が高齢者施設に向かうために乗ったタクシーで、彼女の終戦前後からの波乱の人生が運転手に語られ、運転手も彼女に促されるように、愛して結婚した妻のこと、娘のことを話す。
老婦人の過去は、時代背景も手伝ってびっくりするほど劇的で壮絶。しかし、それを事細かく描くのではなく、あくまでも彼女の記憶の中の鮮明な部分として描いている。日本版では、すみれの若いころを蒼井優が演じていて昭和の時代に珍しく気の強い女にぴったりだった。
パリ/東京の老婦人の思い出の場所をめぐりながら、お互いの物語を話し聞くうちに、二人はすっかり打ち解ける。仏版で、最初は余裕がなく厳しい表情だったシャルルがだんだん柔和で楽し気な表情に代わっていって観ていてほっこりした。
老婦人を演じたリーヌ・ルノー、倍賞千恵子の二人は本当に素晴らしかった。倍賞千恵子と木村拓哉の掛け合いでは、倍賞千恵子のくすっと笑える合いの手が秀逸だった。
東京版のラストシーン、宇佐美が妻子を乗せた車を運転しながら、自然と流れる涙をぬぐうところでもらい泣きしてしまった。
お金に余裕のないタクシー運転手に木村拓哉もないだろうと正直思ったけれど、中年でもあのくらい自然にスマートでカッコいいい運転手じゃないと、人生最期の出会いのご褒美にならないか、、と思ったりもした。
すみれの若い頃のクソ夫に迫田孝也。
この人、「VIVANT」以来クソ野郎の役ばかりになっちゃったら気の毒~と思っているけれど、たぶん「豊臣兄弟!」で家康の腹心、石川数正役でこれから魅せ場があることを期待している。
明石家さんまと大竹しのぶが声の出演をしているのだが、それいらんわと思ってしまう。。。だけれど、これも松竹130年記念作品、山田洋二、だから小林稔侍も必要なんだ・・・、と鑑賞後余計なことを考えた。
フランスのオリジナル、そして山田洋二のリメイク、どちらも暖かい気持ちになれるいい作品だった。
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