ファーストアルバムにして、すごい完成度!と思ってしまった。本人の比類なき才能の賜物のほかに、素晴らしいアレンジやスタッフがいてからこそだとも思うが、詞に関しては若干23歳の若者が紡ぐ言葉とは思えない”老成”さえ感じた。
「先がけてわしは言うたが」「何で何も聞いてくれんかったん」― 青い時代の友達に、あるいは親が子に諭しているよう(「何なんw」)、と思えば、ジャジャジャジャジャジャジャっ、と往年の昭和歌謡のような派手なイントロで始まり「おっと罪の香り、抜き足差し足忍び足」と歌う(「罪の香り」)。
「三度の飯よりあんたがいいのよ あんたとこのままおサラバするよか 死ぬのがいいわ」(「死ぬのがいいわ」)と歌われた時には、老々介護を受けている母の顔が浮かんだよ。
そしてアルバムの最後が「帰ろう」だ!
報道ステーションのインタビュー(2020年9月22日)の放送動画を見ると「帰ろう」という曲は彼の死生観を歌ったものらしく、彼によれば死は怖がるものではなく、元いた安らかなところに”帰る”ということらしい。本人のYouTube動画では、この”帰ろうー”というフレーズが降ってきた時、この曲を完成して世に出さなきゃ、そのためにもっと曲を作らなきゃと思ったほど大きな意味を感じさせてくれた曲とのことだ。
「憎み合いの果てに何が生まれるの わたし わたしが先に 忘れよう」(「帰ろう」)の歌詞で、私の頭にはなぜがイスラエルとパレスチナや、若者が聖戦で命を落とす国々のことが浮かんだ。(私の中でもものすごく飛躍した発想だったけど、心から彼らに届けたい曲!と思ったほどだ)
この「HELP EVER HURT NEVER」は、人の一生の中での迷いや葛藤、そして優しさや幸せについての断片を短い言葉と伸びやかな声・メロディで提示してくれたような気がする。そしてアルバムを聴き終えてて浮かんだのは、”博愛”という言葉。
23歳の若者がどうしてそのような思考ができるのか、例えば「何なんw」に関しては、”スピリチュアル”と言う言葉を本人がYouTubeで言っていたけれど、スピリチュアルなものとの交信を普段から彼はしているのだろうか。
確かに彼の風貌は23歳より年上に見える。「優しさ」のMVを見た時、この人30歳くらいかな、と思ったほどだ。(高校生の娘は40歳?と言った!!)(念のため記しますが、報道ステーションのインタビューに応じる彼は疑うことなく23歳の若者でした)
彼が次に生みだす曲を聴いてみたい。
藤井風を深堀りしようとするときりがない。本人YouTuber で10年分の(中抜けもあるみたいだけど)カバー曲の弾き語りもある。(それが本当に素晴らしい!!)
時々”風沼”に足を取られそうになりながら、なんとか岸にしがみついている私がいる。
参考までに「HELP EVER HURT NEVER」の収録曲リスト
1. 何なんw
2. もうええわ
3. 優しさ
4. キリがないから
5. 罪の香り
6. 調子のっちゃって
7. 特にない
8. 死ぬのがいいわ
9. 風よ
10. さよならべいべ
11. 帰ろう
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