今年、自宅周辺、ワンコの散歩中に金木犀の香りによく遭遇する。前からそうだったっけ?と不思議に思う。それとも今まで鈍感で気がつかなかったのか、香りに気がついても気に留めなかったのか。
とにかく今年は、やたらその香りに気がつき、その香りと共に「星の時計のLiddell」(作:内田善美)という少女漫画を思い出している。
その漫画と出逢ったのは、遠い遠い昔、私が二十歳前だった学生時代。
美しい装丁の分厚い単行本3巻を手にし、大切に大切に1ページずつをめくりながら、”なめるように”読んだ記憶がある。何度も何度も繰り返し読んだ。(一度では難解で理解できないこともあり)
ずっと実家の本棚で眠っていた「Liddell」と「草迷宮・草空間」を数年前に持ち帰り、娘の本棚に置いている。(決してメルカリで売るな、と釘を刺し)
久しぶりに読み直したか、と聞かれればノーだ。ちゃらっと、ぺらっと読めないんだな、これが。読むぞーと心して、また一からなめるように読むことになるだろうから。
金木犀の香りに戻るが、その「Liddell」のお話しの中で、確かLiddellという名の少女が現れる時、金木犀の香りがする、もしくは金木犀が咲き誇る屋敷にその少女が住んでいた・・・みたいなシーンがあったのだ。
金木犀を背景に、カールのかかった長い髪の美しい少女の画まで思い出せる。
花は小さく木としては地味なほうなのに、その香りで存在を際立たせている金木犀と、少女の画が相まって、なんとも不思議な感覚に浸れる。
そして、つい、香りがどこから放たれているのか、遠回りしてでも確かめたくなる。
ほんと、今年になって気づいたのだが、今、我が町は町中そこはかとなく金木犀の香りで包まれているように感じる。香りは木との距離によって、ほのかにも強くにも感じる。
どこだ、どこだ、とキョロキョロしていて、庭木の1本奥の方でそっと地味ーにたたずんでいる金木犀をみつけては、あの画の少女を思い出し、不思議なLiddellの世界がカムバックする。
それは、まるで長い猛暑の後でいただいた”ギフト”のような瞬間だ。
少し忙しさが落ち着いたら「星の時計のLiddell」をもう一度読もうと思う。