30年ほど前に放送された、向田邦子原作、音楽、小林亜星、演出、久世光彦、シリーズ常連出演者、田中裕子、加藤治子、という、昭和生まれにはたまらない、まさに傑作ドラマの再放送を見た。
「家族の肖像」「麗子の足」という作品を見たのだが、田中裕子の本当に美しいこと!主要な出演者の演技が達者なのは言うまでもないのだが、やはり、原作なのか演出なのか、登場人物たちの心の機微の描き方が秀逸なのだ。
うなじを剃る、足袋を脱ぐ、髪をすく、田中裕子のそれらの所作が、なんとも艶っぽく、情念がにじみ出て怖い。
加藤治子の昭和の母の強さや女の業もすごいし、「麗子の足」の永島敏行は、この人ほど日本陸軍(海軍ではなく陸軍!)の制服が似合う俳優はいないんじゃないかと思ったほど。
終戦前後、昭和の戸建の佇まいや暮らし、女優さんがはいたストッキングの足首のしわ(伸縮性が今ほどよくないから)に至るまで、描かれたディテールにしびれた。
そして何はともあれ、見た後、シーンが頭に残るのよ。映画でも、やはり自分にとって良い映画は、観賞後何日か頭のなかで反芻して何度か楽しめる。音楽に至っては、ずっと頭を回っていた。何も立派な人たちばかりが登場する話ではないのに、あの頃のきちんとした暮らしぶりを見て、なんか私もきちんと生活しよう、という気になる。
ということで、滅多にないことに家の周りの草取りをしました。