大泉洋だからこそ成立したのではないかと思われる、ボランティアに我がまま放題を言う筋ジストロフィーの主人公、鹿野靖明の憎たらしさと愛嬌と、そしてペーソス。
あの間延びした顔面と話ぶりは、憎めないよね、いや、一瞬憎めるんだろうけど、嫌いにはなれない。
そしてそれは鹿野靖明、その人も、憎めないという点ではそうなのだろう。
鹿野は24時間介護が必要な体にも関わらず、病院や家族に介護される生活でなく、自立した生活を選ぶ。本作は介護される彼と、彼を介護するボランティア達のドキュメンタリーの映画化だ。ともすればウェットになりがちなお話から"同情"という二文字を剥ぎ取り、介護という活動を通して赤の他人同士の感情がぶつかり合う。体が動かない人の介助、お世話をするというボランティア活動にして、自分との闘いに身を投じることになるボラ(ンティア)たちと、いのちへの欲求をどこまでも求め続けた鹿野靖明(主人公=大泉洋)との奇跡の邂逅。
鹿野のとの出会いを通じて成長するボラの医大生を三浦春馬、その恋人を高畑充希。大学に落ちたのに医大生と付き合いたくて、大学生のふりをする彼女を、高畑充希が等身大に好演。ちょっぴり計算高くて、でも可愛げのある今時の普通の女の子ぶりがいい。しかも鹿野に好かれつつ、障害者への同情など微塵もなく、すっきりハッキリ振るところもいいシーンだ。
一方、三浦春馬はテレビドラマや映画でしばらく観ていなかったような気がするが、ブロードウェイミュージカル「キンキーブーツ」のドラッグクイーンで歌も躍りも、そして演技でも高く評価されている。舞台で一皮剥け、いつの間にか若手演技派となっている。本作では育ちのいい心優しい医大生を自然体で演っていたのだか、後半の泣きの演技が秀逸だった。勝手な推測だけど、あのシーン、ト書きに泣くとはなってなかったんじゃないかな。 そんな男の泣き顔だった。
鹿野靖明の生き様と、人を求める(愛する)純粋さにも驚かされたが、やはりメイン3人(大泉洋、高畑充希、三浦春馬)の演技の巧さに観賞後思わず唸ってしまった。