「ベニスに死す」公開当時、私は小学校低学年だったが、その後映画好きの姉の買う「SCREEN」という雑誌か何かで、本作に出てくる美少年=ビョルン・アンドレセンの顔は知っていた。
しかし、作品自体は観たことがなかった。老作曲家が静養に行ったベニスで美しい少年に出会い、その美しさの虜となり命を落とす―。という話に食指にが動かなかったことと、彼の美しさが性を超越していて、そこに”男子”を直感できなかったから、美”少年”好きの私の鑑賞動機にならなかったのかもしれない。
しかし、今回「世界で一番美しい少年」という、あの「ベニスに死す」のビョルン・アンドレセンを追ったドキュメンタリー作品の存在を知り、「ベニスに死す」から50年後、ビョルンが映画公開からどんな人生を送ったのか、俄然興味がわいてきた。
「ベニスに死す」は、巨匠ルキノ・ヴィスコンティがトーマス・マンの小説を映画化したもので、主人公が虜となる美しい少年がいなければ、そもそも作りようがない映画だ。監督は1年かけて世界中でオーディションを実施し、ビョルンを見つけた。
映画はカンヌでお披露目され、ヴィスコンティによって供されたビョルンの美しさは、世界に衝撃を与え、監督が彼を「世界で一番美しい少年」と言ったことで、ビョルンの人生はとんでもないものになってしまった。
正直、「ベニスに死す」自体は、ビョルンの美しさ以外、何がそんなに素晴らしいのかわからなかった。華やかで優雅なホテル暮らし、ビーチの情景の影でコレラが蔓延する高級リゾート地ベニスの怠惰な美しさ。マーラーの交響曲をはじめ、本作はクラッシックの名曲が老作曲家の心象を語っていると、Wikiや他人のレビューに書かれていたが、クラッシック音楽に疎い私には、のったりと美しい風景が広がる中でクラッシックが流れ、この世のものとは思われない絶世の美少年がちょいちょい画面に映し出され、その陰で少年に恋したおやじがよろめく・・という退屈な映画に思えた。(ただただ、私の鑑賞力のなさのせいです)
ただ、ビョルンの、ポーランド貴族の子息の虚弱な設定にピッタリな華奢過ぎる体と、少女の頬や唇を思い起こすような色白で美しい顔は、その時がピークであるからこそ見てとられる「美の儚さ」「危うさ」「罪深さ」を全身全霊で発っしていて、恐ろしいくらいだった。(そりゃ、人一人死にますわ。)ー【後編】に続く
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