「裏切り者」「豊臣の花嫁」の第33、34回。
苦渋の決断をした石川数正(松重豊)が、シブくて男気があってカッコ良かったです。
本作を見るまで私は、主君と仲間を裏切った徳川の重臣、石川数正の存在を知らなかった。これは戦国最大の謎と言われた事件だったらしい。しかし、本作の解釈では、徳川と豊臣の戦を回避するため、徳川一の頭脳(外交上手で戦略家)の自分、数正が秀吉に寝返ることによって、徳川の戦意を挫いたということになっている。
さもありなん。
秀吉との外交を一手に引き受けていた数正を、秀吉に調略されたと疑う徳川家臣団は、数正のいない御前会議で、彼の出奔の真意を理解し「数正がたわけたことしたから、殿(家康)は上洛するしかない」つまり、関白となった秀吉の臣下になることを、家康本人と共に家臣一同が認めた瞬間だった。その時の、皆で泣きながら叫ぶ「数正のたわけ―」が、何とも心に響いた。
数正という男の権謀と決断への尊敬の念と、仲間を失った堪えきれない寂しさ・むなしさが入り混じった叫びが何ともつらく、彼らと一緒に号泣してしまった。
もう一つ、秀吉の妹、旭を演じた山田真歩の熱演も光った。
夫と離縁させられて家康の正妻として家康の元に嫁いだ旭の健気さが痛々しい。それでも家康の母、於大の方(松嶋菜々子)や側室、愛(広瀬アリス)の心をつかみ、彼女らに秀吉との戦いをやめるよう言わせたのだから大したものだ。
本作は、よく肝心要で強くて賢い女性が活躍する。
上洛か、籠城か、中々結論のでない男どもの評議の中に入っていき、築山(亡くなった家康の正妻、瀬名=有村架純が居を構えていた場所)で取れた花の押し花を差し出したのも、側室の愛(広瀬アリス)だった。
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