2011年の東京国際映画祭の最高賞「東京サクラグランプリ」受賞作品。
事故で首から下が麻痺した大富豪フィリップと、彼を介護することになった貧困層の青年ドリスの友情を描いた、実話を元にしたフランス映画。
なんだかものすごくリアリティを感じた。もちろん実話を元にしたということも理由だろうけど、もしこれが日本の映画だったら、これでもかと涙腺を開ける山場を作りそうなものだ。しかし本作はあくまで淡々と二人の生活レベルの違い(フランス社会の現状)と、実業家を介護する青年、介護される彼の日常を描き、その中で育ちや貧富の差を越えた人と人の肌が触れあう(介護だけに、まさに!)ことによって通い合う”情”のようなものを描きだしていた。
介護経験もない、失業保険を得るために面接にきた粗野なドリスをフィリップが採用しようとしたのは、ドリスが障害を持つフィリップに同情を示さなかったから。良くも悪くもドリスは軽口をしばしば叩くが、障害者のことを本人を前に、ここまで笑いのネタにするな~と感心。でもそれは、障害者その人を笑うのではなく、その現象を障害者の人と共に楽しんでいる様子。ドリスの、その人そのものを見る目がフィリップは心地よかったのだと思う。
ドリス役のオマール・シーンはコメディアンでもあるらしいが、アフリカ系の俳優の演技で時々思うのは、目がものすごく雄弁なこと。特に悲しみとか諦めとか慈しみとかとか、感情の源の魂がそのまま目に在るって感じ。また、フィリップ役のフランソワ・クリュゼも、それこそ顔の表情だけで全てを表現するわけだが、特に笑顔の種類が多くてとてもチャーミングなおじ様だった。
淡々と、、と書いたけど、ラストでドリスの計らいで実現するフィリップと文通相手との出会いが何とも瑞々しく、そしてこの時がドリスとフィリップの別れのシーンだったのが良くできていて映画的。静かで暖かいシーンだった。
俳優本人たちも含め、"最高のふたり"だった。フランス国内では歴代興行収入2位。納得の秀作。