最近、ハマっているドラマのこともあり、やたら役所広司のアップの顔を拝むことが多い。かなり昔に観た映画「最後の忠臣蔵」でも、ラストは役所広司のアップであった。アップに耐えうる面構えと演技力。必ず脳裏に焼き付けられる役所広司の顔。
本作は、8月14日から8月15日、玉音放送に至るまでの一夜、未然に防がれたクーデターの史実の顛末と、ポツダム宣言を受け入れるまでの、昭和天皇および天皇に最も近い政治家や軍人たちの苦渋の選択を描いたドラマだ。戦争ものだけれど、戦闘シーンはほぼない。
玉音放送を阻止し、断固降伏を拒否しようとした畑中(松坂桃李)含む一部の陸軍青年将校たちの極限まで緊迫した動き。その動きを知りながら、陸軍大臣の阿南(役所広司)は、玉音放送の日に自決するべく自宅で最後の酒を部下と酌み交わす。
過激化した青年将校に反乱軍の頭として担ぎ出されぬよう、当時、戦況を冷戦に判断していた軍上層部は、阿南だけでなく大変だったことがわかる。
その夜の阿南は、その”担がれる”危機から逃れ、自分が死ぬことで当時”無傷”と自負していた陸軍の士気を挫く狙いもあったのだと思う。
酒を飲みながら饒舌になり、陛下から譲り受けたシャツを持ち出し、戦士した息子の写真をながめた。
その静かで妙に明るい酒席の様子と、ドカドカと物騒な軍靴の音が聞こえる御所の緊迫した様子が対照的に交互に描かれ、なんだか途中から、この悲劇的なシチュエーションが滑稽に見えてきた。
阿南という人は作品中でも、天皇の信頼も厚いそれは立派な人物だと描かれていたが、この人物をもっても、敗戦を認めず、本土決戦の妄信に憑りつかれた青年をどうすることもできなかった。と言うよりは、そこまで妄信せざる得ない若者を、阿南たち上層部が育てたと言ってもいいだろう。戦闘に憑りつかれた彼らを誰よりも理解していたからこそ、阿南は自決を選ぶしかなかったのだろうか。
青年将校、畑中を演じた松坂桃李のいっちゃってる目が怖い。映画前半では明るい普通の青年に見えた。それが狂気に走るまでに何があった?と思い返してみたが、たぶんそれは、軍隊という集団心理の成せる仕業だったのではないか。
玉音放送を阻止するべく、録音テープを探しに放送局に乱入し、テープは見つからず、自分たちの声明文をラジオで流そうと必死でマイクの前に立つ畑中。そのマイクの電源をガチャンと勢いよく切ったのが、放送局の女性スタッフ(戸田恵梨香)だった。
あーーー!、当時はまだお付き合いもなかったと思う現在のご夫婦、松坂桃李と戸田恵梨香がニアミスしとるっ!と変なところで盛り上がった。(私だけだろう)
最期に、昭和天皇のモッくん(本木雅弘)は大健闘。静かで鷹揚な様子と、阿南を気遣う人間らしい一面を見事に演じていたと思う。
ほか堤真一なども、”らしい”キャスティングで登場していて、実は好きな俳優がたくさん出ている映画だった。
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