役所広司の、何とも言えない間の取り方と、きょとんとした表情で笑いを誘う芝居が好きだ。(ご本人が笑いを意図しているかどうかは知らない)
以前「キツツキと雨」という、若かりし頃の小栗旬と共演した作品でそれを発見して以来、役所広司のその演技がめちゃくちゃ気に入って、そういうシーンが観られそうな映画やドラマはなるべく観るようにしている。
本作も中学校を卒業して帰宅した宮沢賢治(菅田将暉)の成績表を見て「88人中60番目」とつぶやき息子の顔を見た顔と、「はい」と悪びれもせず実直に返事する賢治のシーンがすごく好きだ。
以前、菅田将暉のことを、薄っぺらい若造を演らせたらこの人の右に出る者はいない、と言って褒めたことがあるけれど、それは「ディストラクション・ベイビーズ」「そこのみにて光輝く」「セトウツミ」「溺れるナイフ」などの菅田が役にすごくハマっていて良かったからだ。
その後、彼が日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を取った「あゝ、荒野」やもっと前に新人賞を取った「共喰い」ほかドラマなども観たけれど、やっぱり私の好きな菅田将暉は、auのCMでおなじみのオニちゃんのキャラクターに代表される、単純でやんちゃで勢いだけはある若造なのだ。
その菅田将暉が、本作ではあの「雨ニモマケズ」の詩人であり童話作家の宮沢賢治を演じるという。貧しき人、弱き人の側にいた、心優しき聖人君子みたいな印象のあった宮沢賢治だけれど、本作の中ではどうしようもないバカ息子、資産家だから許される”自分探し”に年月と金を費やしており、まるで死ぬまで親のスネをかじっていたような描かれよう。
その何者にも成れない、だけど人のために何かを成したい心優しき青年を、菅田が丸坊主の頭と骨ばった鋭利な身体、純粋で恐れ知らずの目で体現しており、本当に素晴らしかった。相当身心をすり減らして演じているようにも見えた。
そして、跡取り息子、賢治のながーいモラトリアムを、時に叱り飛ばし、時に励まし、"物書き”になるよう背中を押した親ばかの父親(役所広司)の、深い深い愛情には心から共感した。自分も親として、ここまで子どものことを信じで応援できるだろうか、”銀河鉄道の父”を尊敬しつつ何度も自問してみた。
菅田将暉は薄っぺらい若者が似合うと、やたらこのブログで書いてきたことをお詫びします。繊細で純粋で、深く物事を思考する若者の役にもしっとりハマる。(「ミステリと言う勿れ」の整くんしかり。)
というか、どういう役を演じても相当上手い俳優さんだと思っています。
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おまけ
私がこれまで菅田将暉=チャラい役ぴったりと書いてきたブログ歴