その昔、父は若いころ観た「第三の男」はすごい映画だぞ、と言った。
そして最近「第三の男」を昔何回も観たよ。怖い映画だぞ、と言った。
確かに何回も観たのかもしれないが、”怖い映画”というのは他の映画、例えば「死刑台のエレベーター」と勘違いしているのではないか・・?
オープニングから流れるエビスビールのCM曲、あの、ちゃららららーんららーん、というのがモノクロの映像にのり、とてもスタイリッシュ。(もちろん、エビスビールのCMの方が後だからね)
犯罪映画なのに、この軽快で明るいテーマ曲って何なんだろう。
たぶん戦後の破壊されたウィーンの混沌とした世情を、暗く混乱したものとしてではなく、戦争が終わった解放感、抑圧されていた人々が立ち上がり前を向く様を表現するのに合っていたのだろうか。軽快かつ無責任な明るさがある。
物語は、友人ハリー(オーソン・ウェルズ)の誘いでアメリカからウィーンに来たホリー(ジョセフ・コットン)が、いきなりハリーの葬儀に行く羽目になるところから始まる。ハリーは自動車事故で亡くなったというが、目撃者によるとそこに居合わせたのが2人、いや3人、つまり第三の男がいる、と証言がくい違う。
イギリス人の少佐は、ハリーが違法な薬物を密売しているというが、ホリーは友人が悪事を行っていたとはにわかに信じられず、真実を知るべくハリーの周囲を調べていく・・・。
意外と早々に”第三の男”の正体はわれるわけだが・・。
ハリーの恋人だったアンナ(アリダ・ヴァリ)への同情とも愛情ともつかない感情で揺れるホリーは、友人が犯罪者であるかもしれないという疑念でも苦悩する。
戦争は終わったけれど、殺らなければ殺られる、たとえ犯罪でもやらなければ生き残れない・・刹那的な生き方をオッケーとしたハリーの冷淡な一面を見せつけられるホリーだが、アンナや周囲の関係性からハリーにも情に厚い面がきっとあった。
終盤の下水道での追跡劇は緊迫感に溢れるものだった。そして、追い詰められたハリーが、ホリーに送ったサインは・・・。
美しい並木道を、遠くから歩いてくるアンナをロングで撮ったラストは印象的。テーマ曲と共に目と耳にいつまでも残るものだった。
本作も”猫に小判”。”私に往年の名作”と思ったけれど、こうして思い返して感想を書いてみると、やはり傑作なのだろうと改めて思う。
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