北イタリアの美しい山々が育んだ、対照的な2人の青年の、時と場所を越えた友情の物語ー。しかし、映画館の大スクリーンで観なかった私には、そこに映る山々は雄大な美しさというより険しく危険で、ひ弱な心の自分を拒絶する自然の畏怖にしか映らなかったなあ。映画の結末のせいで余計そう思うのかもしれないけれど。
二人の青年のうち、都会育ちのピエトロの視点で語られる青年の自分探しの旅。
幼い頃から山好きの父に連れられて毎年夏に過ごす山で知り合った同い年のブルーノ。
ハイティーンになって父に反発するようになったピエトロは、以来父と距離をおいたが、父とブルーノは山を通じて親交を深めていた。ピエトロがそのことを知ったのは、父が亡くなってから。山と、山で暮らすブルーノと再会し、生前の父の思いを知ることになる。
寡黙な二人が長年のブランクにもかかわらず、お互いがお互いを友達であると思っていることは、私にもそういう友人がいるのでとても理解できた。
ブルーノとピエトロの関係には”依存”や”甘え”がない。苦しい時に助けてあげたいと思うが、自分が相手を助けられると確信することはない。また、そばにいて欲しいと思う時でも自分から頼むことはない。時に一方が他方から離れ、時には拒絶することだってある。
一人の人間としてリスペクトし、かつて一緒に過ごした他愛もない時間を宝物のように胸に抱えて、相手のことを気にかけているだけだ。
と書いて、友情と愛情の違いが分かった気がした。愛は独占や支配を伴うけれど、友情はそういうものがない。相手への過度な期待はなく、長年伴走することで冷え切ったり終わったりしないような気がする。(現時点の私の勝手な思いだけれど)
それともう一つ。二人が過ごした他愛のない時間は、フィジカルが伴っていること。山や湖での遊び、登山、山小屋を一緒に作ること、言葉は少なくても体を伴って同じ体験をしている。そしてそこには必ず山があった。
観終わって、明石家さんまさんが以前言っていたことを思い出した。
「幸せとか不幸せとか思わない。それがその人の人生なんだ」
貧しさ故に早熟で、山の男として自分の生き方を貫くブルーノの人生。
迷いながら旅をしながら、自分の生き方を探すピエトロの人生。
全く違う二人だけれど、ゆるぎない友情がそれぞれの人生に伴走し続ていることが胸を打つ。
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