ラストシーンは年老いた番頭はん(塩見三省)が、隠居した大旦那(津川雅彦)の臨終を看取った時の顔のアップだった。
劇中でも"怖い顔"と言われ、松吉(林遣都)にも厳しく当たったこともある番頭はん。
しかし、林遣都(松吉)と松岡茉優(真帆)がメインストーリーの主役なら、津川雅彦(和助)と塩見三省(善次郎=番頭)が真裏の、まごうことなく主役だと思う。それほどこの二人の関係性は尊かった。老境に達した二人のベテラン俳優の静と動、情としたたかさの滲み出た演技が心に染み、そこにちょいちょい合いの手で入ってくる、いしのようこのおなごし(女衆=女中)のトリオに、人生の機微の多くを教わったような気がした。
件のラストシーンで、怖い顔の塩見が本当にいい顔をしていた。この人も京都出身の俳優。
また、父親の仇討ちで、松吉の父を斬った建部玄武役の風間俊介についても触れたい。この話のきっかけとなる仇討ちは、実はお門違いであることを知りつつ松吉の父親を殺め、その後の苦悩・人生の辛酸は、松吉のそれと実は同等くらいなのではないか、いや、欺いた側だけに精神的重さは病に犯されるほどだったと言えよう。余命わずかとわかり、討たれる覚悟で真実を伝えに松吉の前に現れた玄武を演じる風間俊介の演技が渾身!松吉と対峙したそのシーンが、この話のクライマックスとも言えるが、両者迫真の演技。お互いが武士を捨て一人の人間として、これまでの遺恨が昇華できた印象的なシーンだった。
若手の脇を固めるベテラン俳優たちが本当にいい味を出していて、大阪、船場商人の暖簾を守る心意気と矜持を堪能できたお話でした。
主な出演者(NHK公式ページより抜粋)
- 松吉(まつきち) …林 遣都 ...
- 真帆(まほ) … 松岡茉優(4回~最終回) ...
- 善次郎(ぜんじろう) … 塩見三省 ...
- 真帆 … 芦田愛菜(少女時代) 9歳のころ松吉と運命的な出会いを果たす。 ...
- お里(さと) …いし のようこ ...
- 嘉平(かへい) … ほっしゃん。 ...
- 梅吉(うめきち) … 尾上寛之 ...
- 半兵衛(はんべえ) … 板尾創路
- お和歌(わか)…萬田久子 ←老舗のごりょうはんとして、迫力満点!