なんか、ものすごいものを観ちゃった・・・。
公開当時、私は映画業界の端っこで仕事をしていた。西島秀俊が、ただひたすら殴られる映画「CUT」のことを業界紙で読んだ記憶がある。覚えているということは、私の中で気に留った映画であったのだろう。西島秀俊という俳優が、今の日本の映画やドラマの世界でこんなに大きな存在になるとは知らなかったけれど。
往年の名作映画にほれ込み、自らも映画監督を標榜している男(西島秀俊)は、借金のトラブルで殺された兄の借金返済のために殴られ屋を始める。兄の借金は、ほかでもない男の映画製作のためできたものだったのだ。
ひたすら殴られ続ける男。ただ、殴られるだけではなく、往年の映画のタイトルをぶつぶつ唱えながら、相手を挑発し自らを鼓舞し、そしてまた殴られては立ち上がる。立ち上がる時、荒い呼吸に交じる唸り声のような息がすさまじい。もちろん腫れあがっていく顔もすごい。撮影当時40歳手前だと思われる西島秀俊が、今よりももっと細マッチョで精悍な顔なのにどんどん見る影もなくなる。最後はすさまじい。
男たちの怒号と肉がぶつかる鈍い音、唸り声、やじ、そんなシーンがひたすら続くのに、なぜか殴れら屋家業が始まってから目が離せなくなった。
この男は、なぜそこまで耐えられるのか。
この物語は、男が殴られて死ぬことで終わるのか。
男の結末を見届けずにはいられなかった。
ー 映画のために死ね ー
(オフィシャルサイトのトップページより)
男は、本作を撮ったアミール・ナデリ監督自身らしい。そして西島秀俊も、ほぼそれに近い俳優なのだろう。
最期に紅一点、ヤクザのオフィスで働く女に常盤貴子。ショートカットでボーイッシュな服装は華やかなイメージの彼女とは真逆。ほとんど台詞がない中、強い眼差しと意志のはっきりした表情で女の心を表現していたのが印象的だった。
往年の映画好きの方ならmust see。たぶんチェック済みのことと思う。
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