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はやし蜜豆の犬も歩けば棒に当たる、

好きな俳優の作品を集中して観るのが好き。その記録や映画の感想、日常気になる現象をぼそぼそ綴っていきます。

「PERFECT DAYS」(2023年):繰り返されるいくつものシーンが、いつまでも心に残る(トイレ清掃のシーンではなく)

J-WAVEに本作のプロデューサーの柳井康治氏がゲストで登場した時、この映画を作るきっかけを知った。
遡ること、2020東京オリンピック前、おもてなしの日本を具体化するために渋谷にアートな公衆トイレを作るプロジェクトが立ち上がる。そのトイレの周知も必要だが、それをきれいに使ってほしいと言う願いもあり、ショートフィルムでも作ろう、みたいな話から始まったらしい。思いつきを相談した相手(=高崎卓馬氏)を間違わなかったようだ。そこから柳井氏の希望、まるで夢みたいな発想が、高崎氏によって昇華され、役所広司に出てもらって、ヴィム・ヴェンダースに撮ってもらって、こんな曲を使いたいなーが、あれよあれよ現実化していったらしい。まるで夢のような話を柳井氏はしていた。

もちろん、そこに高邁な理想とゆるぎない信念があったから、最高の形で本作が出来上がったのだが、まあ、観るのはWOWOWでいいかと最初思っていた。
ところが、その時に映画で使われている「Perfect Day」が流れ、めちゃくちゃいい曲でこれを劇場の音響で聴きたいと強く思ってしまった。

前半はほとんど話の展開がなく、役所広司演じる公衆トイレの清掃員、平山の毎日が淡々と描かれていく・・。ほぼ台詞もない。という退屈そうな話だと知って相当覚悟して出かけたわけだが・・。

実際その通りだった。平山という男の過去や現在や、周囲の登場人物のことも含めて、およそ説明といものがほぼない。(実はそういう映画が好き)
質素で簡素な平山のボロアパートの部屋の一片に並べられた文庫本の棚、毎朝口ひげを整える様子、そして後半、平山の妹が運転手付きの車に乗って登場したこと、平山への手土産、彼が好きだったらしいものがどこかの有名なお菓子ではないかと想像できたこと・・・。

数知れた平山の通い先、夕食を取る居酒屋、時々顔を出すスナックのママとの関係、古本屋。彼の日常をまるっと見せられ、平山という人物の過去の出来ごとや今、そして未来までも、鑑賞後いくらでも想像することができた。

そして、現在の平山が淡々とした日常の中に見つける小さなしあわせ、ほっとしたり、思わずにっこりしたりする一瞬を思い出し、”PERFECT DAYS”というタイトルを噛み締める。

PERFECT DAYSは、平山だけのものではない。この私にだってある。あえて書くが、平山が修行僧のように我慢強いとか、絶対に怒らない菩薩のようだとは全く思わない。彼の中にある弱さ、今の境遇に甘んじる(この言葉は適切ではないと思うが)優柔さだって垣間見られるのだ。だから、平山が特別な人というわけではないと思う。ただ、平山は人生を慈しむ術を知っているというだけだ。

誰にでもあるはずの平山的感覚を大切にしたい。今日も今日とて心がざわざわした時に、平山だったらどうするだろう、何を見て切り替える?と反芻していた自分がいた。

 

本作がヴィム・ヴェンダースの傑作と言えるかどうか私にはわからないが、役所広司のカンヌ最優秀男優賞は文句の言いようがない。役所広司の顔がスクリーンいっぱいに映るという作品を何本も観たことがあるが、本作の大ラスのそれは秀逸だ。

①泣く男の顔が②長尺で③大画面に映し出されて耐えられるのは、本作の役所広司か、今よりもっともっと若かったティモシー・シャラメ(「君の名前で僕を呼んで」)くらいではないかと思ったほどだ。

役所広司スゲー。それしか言えん。

劇中の曲ももちろん素晴らしかったです。

 

本作がカンヌ映画祭で話題になったことで、製作のきっかけとなった東京トイレプロジェクトのことを広めるのに少なからず役立ったと思う。「トイレをきれいに使いましょう」という隠れたメッセージを超えて「人生を慈しもう」という表のメッセージを強烈に放っている。いやあ、映画って素晴らしい!

 

プロデューサー柳井康治氏のメッセージはこちら(これ大事)

www.perfectdays-movie.jp

 

「君の名前で僕を呼んで」の感想はこちら(オマケです)

www.mitsumame.work

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