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はやし蜜豆の犬も歩けば棒に当たる、

好きな俳優の作品を集中して観るのが好き。その記録や映画の感想、日常気になる現象をぼそぼそ綴っていきます。

「億男」(2018年)

 ここまで冴えない佐藤健も珍しい。

イケメン以外に、ヤンキーだったりクセが強かったり、ヘタレだったりする佐藤健は見たことあるけど、借金を抱え妻に逃げられそうになっている30代の図書館司書という地味すぎる役に、これって佐藤健である必要ある?って鑑賞中何度か反芻してしまうほど。

 

借金返済に明け暮れる主人公、一男(佐藤健)は宝くじで3億円を手にしものの、使い道を相談した親友、九十九(高橋一生)に持ち逃げされてしまう。彼を探すために彼と共にかつて事業を成功させ、共に何億もの大金を手にした仲間たちに会い”金とは?”について深く考察することとなる。

 

映画プロデューサーである川村元気の、映画のための小説(決めつけてはいけないかもしれなが、デビュー作「世界から猫が消えたなら」を読んだ後映画化された時は、さもありなんと思ったものだ)と、映画化された作品は今一つ食指が動かない。ひとえに「世界から・・」を期待して読みすぎて、ラスト(のオチ)にがっかりしたせいだろう。

で、今回の「億男」もなんとなくラスト(オチ)が想像できて期待せずに観た。確かにオチは想像したのと大して変わりなかったが、そこに至るまでに畳みかけるように提供された、金持ちの人々との出会いのオムニバスショートストーリーは過激で興味深かった。というかストーリー云々より、オムニバスのキーマンを演じたそれぞれの俳優が、私にとっては前のめりで観てしまう程の面白さ!最初の北村一輝を見ただけで、やっぱり観て良かった!と思ったほどだ。

 

北村は、最初誰だかわからなかった。実年齢より10歳以上若い設定で、IT開発者で変わり者ぶりが半端ない。

次の藤原竜也は、語るまでもない。イカれたインチキ感が半端なく、よくまあ佐藤健は笑わずに普通の人としてやつの前に立ってたなと思うくらい可笑しかった。北村一輝も藤原竜也も、成金のでっぷり感を出すため、胴回りに何か巻いていた(?)のもナイス!

 そして3人目の沢尻エリカは昔輝いていた人、今は公団に住む主婦という役がなんとはまっていたことか。細い眉と薄い化粧、金に纏わる人生について悟った感じの女。この女優、女優として一番キラキラした年代を自ら棒に振った後、その間舐めた辛酸が何十倍にもなって肥やしになったんだろうとつくづく思う。本作も出番こそ少ないが、見た目で役のほとんどを語ったのは素晴らしい。

 最後に、学生時代に株で1億円稼ぎ、お金とは?について深く考える”旅”をする九十九を演じた高橋一生。吃りというハンディを持ちながらも落語を演らすど淀みなくしゃべるという設定。

吃りの高橋を初めて見たのだが、やはり芸達者だなあと、改めて思った。一男に対して揺るぎない信頼と友情を持ち合わせているのはわかるが、それ以上の人物の背景は語られない。なんかフワフワしていて正体不明、まるで一男の人生の船頭のように存在する男。居そうで絶対居ない、そんな男を存在させたのはやはり高橋のなせる技。すごいなー。

 

佐藤健は、アクのない、普通の人をやることが増えたよね?でもそれが一番難しいと思う。とにかく全編、ほかの出演者のいっちゃっている演技のなか、一人平静を保ち、普通の男を演じきったとことで◎。

億男 通常版(DVD1枚組)

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「ノーサイド・ゲーム」

最終回だけ見て書くのも失礼な気がするけど、主人公は言わずもなが、登場人物全員がラグビーを愛し、ドラマ全体でラグビーの素晴らしさを啓発している。

ラグビーがいかに仲間を信頼し、フェアで崇高な精神を基本に技と力を競うスポーツであるか。ニュージーランド代表のオールブラックスの”ハカ”のパフォーマンス映像まで挟んで、試合にかけるスピリットを賞賛。日本で開催されるラグビーワールドカップ1週間前にその最終回を飾ったのは、もちろん偶然ではあるまい。NHKが東京オリンピックを盛り上げるべく1年かけて放送している大河ドラマもあるが、こちらは短期集中、すばらしい喧伝となった。

 

TBSのこのドラマ枠の、特に池井戸潤原作ものは感動・号泣必至であるのはわかるが、ついでにストーリの展開もだいたい予想がついてしまい、まるで水戸黄門のように視聴者を裏切らない結末に、私は視聴意欲がわかずにずっと見ていなかった。ただ、間もなく開幕するラグビーワールドカップについては心待ちにしていたため、(実はこれも偶然オールブラックスというチームを知って、そちらが先でラグビーに興味を持ったのだが)”最終回で因縁の相手との死闘・・!”という予告コピーにつられて最終回だけ見たというわけだ。

試合中もまあ丁寧な解説で技の妙や、チーム戦略を解説してくれ、私のような素人にも面白い!と思わせてくれた。このドラマの最終回を見たおかげで、ますますワールドカップが楽しみになってきた。

 

 

 

 

「セッション」(2015年): 自分に才能がなくて本当良かった

冒頭のドラム演奏シーンで、自分に”才能”というものがなくて本当に良かった、早くもそう思ってしまった。

天才はもって生まれた才能にプラス、それをさらに開花させる集中力と無限の努力ができる人のこと。そして天才にしても、その過程は決して楽なものではないと。

 

名門音楽学院に通うドラマーのニーマン(マイルズ・テラー)は、伝説の鬼教師のフレッチャー(J.K.シモンズ)に見いだされ、彼の率いるバンドに加わることとなる。

スカウトが来るような数々のコンクールで好成績を収めている彼のバンドで経験を積むことは、音楽家としての将来を約束されたかに見えるが、指揮官のフレッチャーの望む音、テンポに応えなければならない地獄の日々の始まりとなる。

フレッチャーは英語の中で人をダメにする2つの単語は、”Good job”だと言い放った。そのくらい徹底的に人を貶し、罵詈雑言を浴びせメンタルを追い込んでいく。そこから這い上がった者だけが、天才としての仕事をなし得ると。

フィクションとは言え、アメリカの教育現場でこのようなパワハラ、血が飛び散るまで練習することを要求する(もはや)体罰が描かれるのかと全編眉をひそめて2人の関係性、物語の成り行きを見守ることになった。

 

本作のレビューで誰もが触れるラストの演奏のすばらしさについて。

フレッチャーに再びステージでこき落され、ステージを一旦去りかけたニーマンだが、2度目はそのまま引き下がらなかった。なぜなら、フレッチャーの自分への度を越した仕打ちが、実は彼の"天才"を引き出そうとするフレッチャーなりの(もはや病的な)やり方だとはたと思い当たったのだろうから。たとえそれが思い違いだとしても、彼にはリベンジする必要があった。

演奏の最後、目が合う。2人が初めて"得たり!”とニヤリとした笑顔を交わす。常軌を逸したやり方でも才能を開花させようとするオニ=フレッチャーと、病んでまでもその虜になっていく才能=ニーマンのセッション。それは罵詈雑言の練習の日々からずっとこのステージの瞬間まで続いていたのだ。

物凄いテンポの演奏の中で、二人が交わした視線は鳥肌もの。観ているこちらが、オニのフレッチャーに”ざまあみろ”と心の中で叫んでいた。

 

セッション [DVD]

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「楽園」(10月18日公開)

綾野剛主演と謳っているが・・・。

綾野演じる主人公豪士が何者であるか、何を考え何を欲して生きていたのか、最後までわからなかった。それだけではない、この作品、田舎のY字路で疾走した少女の事件に端を発しているのだが、最後までその少女がどうなったのか(たぶん殺されたのだろうが)犯人は誰なのか、その判断を観る者に委ねている。

吉田修一の短編「犯罪小説集」の中の2編を元に作られているとのことだが、ある地方の村という”土地”で2編のストーリーをかろうじてつないでいる感じがした。

 

綾野剛の出演作をたくさん観ているわけではないが、悲しくて寂しくて、その傍らにささやかな怒りを抱いている弱弱しい青年、こんな綾野もいるんだなと驚いた。

疾走した少女と最後にいた友達として、事件後傷ついたまま大人になった紡(杉咲花)が閉塞感ただよう地元を飛び出し、消えない過去と理不尽な現在を抱えながらも生きようとする姿勢が唯一の救いか。彼女に思いを寄せ、ずっとつかず離れず寄り添ってきた広呂(村上虹郎)の笑顔も良かった。

 

それと、書かずにはいられない、綾野剛演じる豪士の母親役に黒沢あすか!

今回は外国人の母子家庭の母親として、ひ弱な息子をかばう母親を熱演。もう本当にうまい。素晴らしい。主役級でないにしても存在感が半端ない。いつ見ても、そういう女がいる、というリアリティ。リアリティを超えるすごみ。特に今回は、どんな不幸が襲ってこようがガンとして生き続ける力強い女、アジアの女の情の深さとしたたかさが見事。私が最近観た作品では影を持った母親役が多いのだが、いつか、はじけた、あっけらかんとしたオバサンを演る黒沢あすかを観てみたいなと思う。

rakuen-movie.jp

 

 

 

「いだてん」-14

ひょっとして、本作「いだてん」の主人公は役所広司演じる、加納治五郎なのではないかと思った。

それくらい、オリンピック招致活動には加納治五郎なくしては語り得ないし、演じる役所広司の存在感が大きすぎて、思わずそう感じてしまった。

 

どうしても第二次世界大戦前後を描くと背景が真っ暗になる。その暗さの中を、阿部サダヲが絶妙な台詞回しで、一筋の細い光をつくり疾走している感じ。

そして前半で出番が終わったと思った金栗四三の中村勘九郎が、仲野太賀と共に東京オリンピックに向けてちょいちょい再登場してきたことで、またあのバカみたいに正直でまっすぐな男の突き抜けた明るさがみられる!とハッピーな気持ちになった。

ところで、太賀を最近やたら見る。よくよく考えれば、林遣都とデビューが近いはずだし、年齢的は菅田将暉と同じで実際とても仲良しらしい。先日公開された「タロウのバカ」で共演している。今のところ主役級を演っている作品を見ていないけれど、若手の中でうまいよね。なんか中村勘九郎とのコンビがすごくいいなーと思う。

 

で、今回はその二人のことよりも、久しぶりに描かれた熊本の四三の婿養子先、池部のお義母さん、大竹しのぶについて。

いやあ、久しぶりに泣けました。四三が熊本の家族と家をほっぽって東京に行きたいといい、それを許す場面。別にもらい泣くシーンではないんだろうけど、さすが大竹しのぶだよね。おばあちゃん役にして、あのドスの効いた声と迫力で一気に場を持って行っちゃう。怒りと情けなさと、そして愛情深い年寄りの感情がつーっと真っすぐ伝わってきた。

おばあちゃんの大竹しのぶ、彼女の魅力を再発見できたシーンでした。(大竹しのぶはおばあちゃんではないと思うけど、役的におばあちゃんね。)

 

「あなたの番です」-10

面白いミステリードラマだった!

ミステリーにありがちな、最初からコイツ怪しいと思わせる伏線が幾重にもあり、怪しいと思ったら早々に殺されたり、どんどん人が殺されていく中で、犯人が分わかるケースもあれば最後までわからないものもあり、推理欲を大いに掻き立てられた。次週が待ち遠しくて仕方ない、録画ではなくONタイムで見たドラマも久しぶりだ。

終盤はおおよそこの人が犯人?とほぼ目星はつくも、それに至るまでのちょっとした想定外の展開、そして事件解決後の後日談的”新事実!!”など、最後まで予想以上の驚きを提供してくれた。

そもそも、最初から怪しい人達が実は殺人にはなんの関係もなかった点など、こちらの想像力と推理力を欺くところも秀逸。うまい!さすが企画、秋元康!と思わずうなってしまった。

ほぼ能面の演技だった西野七瀬が演じる黒島が、病的猟奇的殺人犯だったわけだが、それが分かった後はあの能面演技も逆に良かったんだと思う。最後に見せ場を西野に持ってきたところが秋元かあと思ったけれど、西野七瀬の今後の女優としての可能性も出てきたわけでまあいいんじゃない。

前半3か月、後半3か月で、最愛の妻を失ってからキャラ変更しつつも、芯は翔太君として菜奈ちゃんを愛し続けた田中圭のぶれない演技に惚れる。ちょっとこの俳優さん、ブレークしたから出まくっている!だけでなく、その実力と人として信頼されているところで、しばらくは引っ張りだこなんだろうなと思う。

www.ntv.co.jp

「生きてるだけで、愛。」(2018年)

躁鬱病の鬱が原因で過眠症の寧子(趣里)の、圧倒的な無茶苦茶ぶりにハラハラしたり、痛いほど寂しい彼女を応援したり、なんだか息もつけない展開だった。

”自分”が強すぎて自身さえも”自分”と折り合えない。強烈な自分が出てコントロールできなくなった時は最終的に走りだすことでその場から物理的に離れる。あるいは着ているものをすべて脱ぎ捨てて全裸になって、本当の自分だけになってそれと対峙する。

寧子の台詞に「生きているだけで、疲れる」「私は自分と別れられない。津奈木(同棲中の彼:菅田将暉)はいいなあ、私と別れられて」という台詞がある。切なくて心に残る台詞、シーンだった。

そんな寧子に、本心からの言葉を発することもなく、ただ彼女の癇癪的な言動に対して当たり障りのない言葉と態度で応じながら、3年間一緒に暮らしている津奈木という男。菅田将暉が優しいんだか、冷たいのだかわからない青白い顔のゴシップ雑誌のライターの青年を見事な”受け”芝居で存在させた。

本当は文学小説家を目指していたのに、入った出版社でゴシップ雑誌のライターに甘んじ、やりがいもなくただ忘れられるための記事を大量に書き続ける毎日。家に帰れば惰眠をむさぼる鬱の彼女。でも津奈木は、決して自分にウソをつかない、全力で自分を表現し、相手にも自分への理解と自分を表現することを求める寧子の生き方の断片が必要だったのではないか。

 

この作品で趣里は、日本アカデミー賞新人賞の他いくつか受賞している。受賞に恥じない、圧巻の演技。華奢な体ゆえにヌードに全くいやらしさがなく、役柄も相まって人間離れしていて妖精のようだった。

そして、今回添え物のようなポジションだった菅田将暉の、”菅田将暉劇場”を封印した佇まいもいい。けっこう小汚ない感じの菅田くん。映画出演初期の頃の「共喰い」や「そこのみて光輝く」とかもそうだったなーと改めて思った。

 

生きてるだけで、愛。 通常版 [DVD]

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