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はやし蜜豆の犬も歩けば棒に当たる、

好きな俳優の作品を集中して観るのが好き。その記録や映画の感想、日常気になる現象をぼそぼそ綴っていきます。

朗読劇「EveryDay」:林遣都×瀧本美織バージョン

同棲していた彼女と喧嘩をした直後、事故で彼女は昏睡状態になってしまった。

それなのに翌日、集中治療室にいるはずの彼女が部屋にいて、お弁当を作ってくれた。― 1週間、時間をもらったのだと。

紅茶が好きで、いろいろな種類の紅茶を入れてくれる彼女。タコのウィンナーはないけれど、卵焼きが入った弁当をいつも用意してくれる彼女。本当はハワイに行きたいのに、多摩川の土手でするキャッチボールに、にこにこ付き合ってくれる彼女。

美しく、聡明で、思いやりがあり、彼にはもったいないほどの彼女なのに、3年間もダラダラと一緒に暮らしながら、”結婚”をお互い言いださなかった。

彼は、彼女のことを本当に心から愛していたのだろうか。

彼女のことを心から大切に思っていたのだろうか。

彼女といるとラクだから、カワイイから、気が利くから・・丁度いい。そんな風に思って一緒にいただけではないのか。

(たぶん)死ぬ前に1週間だけ猶予をもらい、彼との日常をすごすために来た彼女は、彼の口から自分のことを愛していたか?いつか結婚する気はあるのか?それまで気にかかっていたけれど、口にすることができなかったことを尋ねてみたかったのではないか?(実際その1週間の間に尋ねているし。)

 

交わされる日常の会話。紅茶を淹れる音。キッチンに立つ彼女の横顔。
愛おしくて、かけがいのない二人の時間。
あっという間に過ぎていく1週間は、しかし彼に彼女がもう少しでいなくなるという現実を受け入れるよう、彼に促す時間でもあった。

 

大切な人との日常を、改めて噛み締めました。
涙なくしては観られません。―そういった感想が聞こえてくる。
確かに、彼と一緒に号泣したよ。
でも、号泣したけれど、直後から頭をもたげた疑問。彼女の死を受けれたから、あるいは受け入れなかったから?彼女が最後に「ただいま」と言ったら「おかえり」って言って、と言ったのに、彼は「おかえり」って言わなかった。自分はさんざん「おかえり」って言ってもらったのに。
彼が彼女を愛していたのは本当だと思う。だけど、それは、なんていうか、かなり”エゴ”からくる愛で、彼女のことを一番に考えた愛ではなかったように思う。
”オレ”ありきの愛だったように思う。

だから、きっと、この彼は、ほどなく彼女の死を乗り越えられるはず。
彼女がいなくても、彼の日常はスタートする。

なぜって、彼に限らず、穏やかに過ぎていく日常=EveryDayこそが、生きる者にとって本当に大切なのだから。

 

林遣都の朗読劇をオンラインだけれど初めて観た。さすがだな、と改めて思った。

本を手にして朗読するスタイルだけれど、紅茶を飲むしぐさ、考えこむしぐさなど、遣都はアクションが伴う。
一方の瀧本美織は、完璧に台詞が頭に入っているのだろう、ほとんど本に目を落としている様子がなく、それは生身の人間だからではないからの演出なのか、アクションがなかった。瀧本美織の聡明さと美しさが、しっかり者の彼女の悪ふざけをしたとも取れる1週間に、なぜだか緊張感を与える。

ここまで書いて、思い至る。
やっぱり、伝えたいこと、言いたいことはちゃんと、その時伝えておかないといかんと。普通、神様は死ぬ前に1週間も、大切な人と会話する時間をくれたりはしないから。

 

 

 

 

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