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はやし蜜豆の犬も歩けば棒に当たる、

好きな俳優の作品を集中して観るのが好き。その記録や映画の感想、日常気になる現象をぼそぼそ綴っていきます。

「ミッドナイトスワン」(2020年):才能があることの残酷

第44回日本アカデミー賞、最優秀作品賞と最優秀主演男優賞(草彅剛)に輝いた本作。確かに草彅剛は素晴らしかったけれど、同時に渋谷慶一郎のテーマ曲も相当素晴らしかった。私にとっては「戦場のメリークリスマス」のテーマ曲(坂本龍一)以来くらい、ラストシーンであのピアノの旋律と音が体中に一瞬で染みわたり、心が震えた。

 

鑑賞するまでは、トランスジェンダーの主人公が、育児放棄された親戚の少女と暮らすことになり・・という話の導入部分を聞いて、以前観た「彼らが本気で編むときは」(2017年)のような話かなと思っていた。生田斗真が女性として生きる(同棲する彼氏もいた)トランスジェンダーを演じたそれは、トランスジェンダーとしての生きにくさや孤独を描きながらも、最後はそれではもハッピーエンドらしい終わり方をしていた。

しかし、本作の主人公、凪沙(草彅剛)はトランスジェンダーであることを親に言うこともできず、手術もできず、自分のジェンダーギャップに悩み続けている。
そんな彼女が新宿のアパートに迎えた従妹の子ども、一果(服部樹咲)はバレエの才能があり、渚沙は経済的に苦しいにも関わらず、その才能を伸ばしてあげたいと思うようになる。そう思わせるほど、バレエを踊る一果は観る人の心を一瞬で奪った。手足の長さ、美しいステップ、指先、無駄なものが一切ない美しさ!(本作でスクリーンデビューした服部樹咲は、数々のバレエコンクールでの受賞経験がある、ガチ!バレリーナだ!!)

一果の才能に触れたことがきっかけで、悲劇的な顛末になる登場人物が凪沙のほかに、もう一人いる。一果が一時転校した先の中学校の同級生で、バレエ教室でも一緒だった、りん(上野鈴華)だ。りんはお金持ちの娘で、二人はライバルで親友だった。そして二人とも親からの本当の愛を受けていなかった点で共通していた。

とは言え、映画は一果のバレエの才能についてフォーカスしているわけではなく、トランスジェンダーの主人公を取り巻く話の要素の一つだ。あくまで一人のトランスジェンダーの生きざまを描いていると思う。しかし凪沙は、躍る一果を見た時、自分にはない美しさ、希望、才能を持つ者に対して、母性のような慈愛を覚える。そしてそのせいで凪沙は自らの命を削ることになる。バレエシーンは圧巻でなければ説得力がなくなるわけで、何度も書くが、服部樹咲の踊りは1ミリの不足もなく、それにしっかり応えていた。

 

最後に、最近描かれるトランスジェンダーは、演じる人も、その描かれ方もキレイだけれど、本作は違ったように思う。40歳を超え、しかも骨格的にかなりごつごつした(手術前の凪沙にはぴったりなのだろうが)草彅剛が演じた凪沙は、時に疲れたオバサンに見え、勤めるお店の場末感が半端ない。正直、化粧をした草彅剛を全編通して美しいと思わなかったのだけれど、ラストシーンの凪沙の横顔だけは、本当に美しかった。そしてその後の、例のテーマ曲。・・・号泣必至。

未だロングランが続いている本作、劇場で観て、あの曲をサラウンドで聴いたら、もっと胸に迫るものがあるだろうな。

 

 

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