はやし蜜豆の犬も歩けば棒に当たる、

好きな俳優の作品を集中して観るのが好き。その記録や映画の感想、日常気になる現象をぼそぼそ綴っていきます。

「カラマーゾフの兄弟」(2013年)-2

冒頭から殺人遺体で登場する、黒澤家の当主、黒澤文蔵(吉田鋼太郎)を殺した犯人捜しの話は、容疑者として3人の兄弟の取り調べから始まる。殺された文蔵は、事業家として一代で財をなし、その土地で彼の事業の恩恵を受ける者は多いのだが、やり方が非道かつ悪徳、人物も、酒好き、女好き、その上、金の亡者であり、彼を憎む者は実子の兄弟以外でもかなりいるという設定。

吉田鋼太郎がシェークスピア俳優としての力量をいかんなく発揮して、その絶対的ゆるぎない”悪”を完璧に演じきっていた。黒澤家の豪邸の外観は、鎌倉文学館とのことだが、屋敷の中も(セットだろうけれど)外観通りの時代じみた洋館。その中でガウン姿がここまでに似合う俳優もそうそういまい。カッケー!鋼太郎さん。

 

一話ごとに3兄弟それぞれが父親を憎む背景が紐解かれていく。

最初から最後まで眉間の縦皺を解くことなくしかめっ面、深刻かつ沈痛な面持ちで父親との葛藤と闘うエリート弁護士の次男、勲=市原隼人。あまりに固定された表情と強張った感じの動きに、ロボットかと思ったよ。それまでの真っすぐ実直、熱血漢の役のイメージとはまるで違う、切れ者だけに何を考えているのかわからない、急に人を殴り殺しそうな憤怒を隠した若者を熱演していた。

長男の満を演じた斎藤工は、金持ちのボンボンの甘さと、粗野、軽さ、思慮の浅さと長男の人の好さを体現して十分。父親殺しの罪をきせられ、自分を嵌めたのは弟の勲ではないか、エリートの弟を妬む心と、長男として二人の弟を横暴な父親から守れなかった不甲斐なさを感じている、実は優しい男。

そして三男の涼=林遣都はと言えば、二人の兄に守られ、イヤのことに目を伏せて見なかったことにしてひたすら従順を貫くことで自己防衛して育ったアマちゃんとして存在。あの屋敷であの親で、なぜそこまで純粋に育った?と思うほど美しい心(と言いつつも、父親への憎悪は兄2人並みには持っている)の青年を、林遣都がブレずに疑う余地なく演じていた。素直に兄を慕う様子は、林遣都そのものではないかと思うほど。(実際次男さんですし)

 

長男の満が濡れ衣を着たまま、真実が闇に葬られようとするのを、少しずつ真実への扉をこじ開けていったのは、実は涼の、亡くなった母を思慕する思いと、純粋な良心だった。そして、二人の兄のお互いに向けられた疑念と不満の蟠りをとかしたのも、二人の兄を信じる涼の、兄たちを疑わない心だったように思う。絶対に兄二人は父親を憎んでも、殺したりはしないと。

それを裏付ける背景として描かれる、幼少期の彼らの屋敷での生活は悲惨そのものだ。父による母への暴力と兄弟たちへの虐待、挙句母親は自殺してしまうのだから。(ちなみに母親に、母親役をやるには若すぎる、でも当時からやっぱり上手かった安藤サクラ。)

父親殺しの真犯人への近づいていくクライマックスは、戦慄のシーンも。いよいよ松下洸平の独壇場!